内 容
公共のための「有用な科学」が追求された時代 —— 。国家による最初の本格的な科学研究機関であるパリ王立科学アカデミーが、科学活動の文化的・社会的な基盤を形成する一方、啓蒙のフィロゾーフの参入によって統治のための科学へと踏み込んでいく過程を、初めて本格的に解明。科学史・社会史・思想史を横断する力作。
目 次
序 章 「アカデミーの時代」と科学の制度化
第Ⅰ部 18世紀前半までのパリ王立科学アカデミー
第1章 学者の社会的地位とアカデミー構想
1 17世紀初頭までにおける学者の社会的地位
2 王の庇護を求めて
3 科学アカデミーと学者の役割
第2章 「有用な科学」の追求と18世紀前半における一定の達成
1 終身書記フォントネルの言説と「有用な科学」の追求
2 「専門性」を生かした副業の模索 —— レオミュルの嘆願
3 政府と科学アカデミーの関係
第3章 「科学の共和国」と外界に対する距離感
1 政治・文化における分水嶺としての18世紀中葉
2 技術・産業における変化との関わり
第Ⅱ部 啓蒙のフィロゾーフ達と問い直される科学の「有用性」
第4章 再定義される科学の「有用性」
1 啓蒙のフィロゾーフ達とその科学観
2 啓蒙期の科学観における理論研究の位置と「実利主義」
3 コンドルセの科学観と「有用性」
第5章 政治改革と「科学の共和国」
1 テュルゴーの改革と学者達の挑戦
2 大臣ネッケルの政策と監獄調査
第Ⅲ部 統治のための科学とコンドルセのユートピア
第6章 1780年代における「エコノミー」研究主題群の展開
1 「エコノミー」分類と旧字綴りの謎
2 宮内大臣ブルトゥイユと科学アカデミーの接近
3 「政治経済学」としての病院改革問題
第7章 コンドルセの社会数学と科学アカデミーの改革
1 《政治算術》とコンドルセ
2 新しい言語としての科学と科学アカデミーの改革
3 人口・保険・公共事業 ——「統治の科学」を介した学者と行政官の遭遇
第8章 フランス革命と科学のユートピア
1 革命と科学アカデミー
2 「有用な科学」をめぐる闘争
3 コンドルセの『人間精神進歩の歴史表』と夢の終焉
終 章 「アカデミーの時代」が遺したもの
—— 制度・ユートピア・忘却
1 科学技術史上における科学アカデミー像の再解釈
2 フランス啓蒙思想研究と科学アカデミー史の関わり ——「有用性」と科学
3 「エコノミー」と経済学史
4 むすび ——「有用な科学」と啓蒙の専制
あとがき
注
参考文献
索 引
受 賞
書 評
『社会思想史研究』(第36号、2012年、評者:川島慶子氏)
『歴史と経済』(第216号、LIV-4、2012年7月、評者:森岡邦泰氏)
『化学史研究』(第39巻第2号、2012年、評者:坂本邦暢氏)
『週刊読書人』(2011年12月23日号、評者:横山輝雄氏、髙木勇夫氏)
関連書
『リヴァイアサンと空気ポンプ』 S.シェイピン・S.シャッファー 著/吉本秀之 監訳/柴田和宏・坂本邦暢 訳
『科学ジャーナルの成立』 アレックス・シザール 著/柴田和宏 訳/伊藤憲二 解説
『イノベーション概念の現代史』 ブノワ・ゴダン 著/松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
『客観性』 ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン 著/瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳