内 容
実験で得られた知識は、信頼できるのか。空気ポンプで真空実験を繰り返したボイルと、実験という営みに疑いをもったホッブズ。二人の論争を手がかりに、内戦から王政復古期にかけての政治的・社会的文脈の中で、実験科学の形成を捉え直した名著、待望の邦訳。
【ALL REVIEWS】『イギリス哲学研究』書評(第40号、2017年3月、中野安章氏)
著者紹介
スティーヴン・シェイピン
(Steven Shapin)
1943年生まれ。エディンバラ大学科学論ユニット、カリフォルニア大学社会学教授を経て、2004年からハーバード大学科学史教授。2014年に科学史の世界でもっとも名誉あるサートンメダルを受賞。科学知識の歴史社会学をリードし続けた科学史家・科学社会学者・科学論者。主著に『科学革命』『真理の社会史』がある。
サイモン・シャッファー
(Simon Schaffer)
1955年生まれ。世界の科学史の中心機関、ケンブリッジ大学科学史・科学哲学科の科学史教授。2013年に科学史の世界でもっとも名誉あるサートンメダルを受賞。『実験の用途』『啓蒙期ヨーロッパの科学』『ロバート・フック新研究』『意識する手』等々、著名な科学史家・科学社会学者と組んだ数多くの編著書がある。
目 次
2011年版への序文
26年後に ——『リヴァイアサンと空気ポンプ』初版から一世代がすぎて
歴史記述法の伝統
制度的な状況
対象をさだめる
近代性をつくりだす
奇妙な事件
楽観的になる理由
垣根を越えて
第1章 実験を理解するということ
第2章 見ることと信じること —— 空気学的な事実の実験による生成
事実生産のメカニズム —— 3つのテクノロジー
空気ポンプという物理的なテクノロジー
エンブレムとしての空気ポンプ
空気ポンプと「感覚の帝国」
ふたつの実験
事実と原因 —— 空気のバネ、圧力、そして重さ
科学を目撃する
冗長さと図像
実験の報告にみられる謙虚さ
科学の言説とコミュニティの境界
論争の作法
3つのテクノロジーと同意の本性
第3章 二重に見ること —— 1660年以前におけるホッブズの充満論の政治学
「真空を否定すること」—— ホッブズと実験的空気学
リヴァイアサンの政治的存在論
リヴァイアサンの政治的認識論
哲学の目標
第4章 実験にまつわる困難 —— ホッブズ対ボイル
実験的空間
実験のなかのさまざまな空気
哲学の装置
「才知」、独断論、そして実験コミュニティ
実験と原因
ホッブズの文章上のテクノロジー
ホッブズの哲学における原因、慣習、確実性
第5章 ボイルの敵対者たち —— 擁護された実験
リヌスの細紐仮説
敵対者としてのホッブズ
「議論の方法」
空気の組成
ボイルとホッブズ —— 大理石のような人びと
ホッブズ、イデオロギー、「通俗的な」自然概念
ヘンリー・モア ——「自然学者たちと、彼ら自身の用語で話しあうこと」
「あの怪物的な空気のバネ」—— モアにたいするボイルの応答
第6章 再現・複製とその困難 —— 1660年代の空気ポンプ
ポンプを製作する —— ロンドンとオックスフォード
ポンプを複製する —— ロンドンとオランダ
較正と変則例 —— オランダとロンドン
空気ポンプのアイデンティティを確立する —— ロンドンとオックスフォード
ポンプを広める —— オランダとパリ
再現・複製の限界 —— ドイツとフィレンツェ
第7章 自然哲学と王政復古 —— 論争のなかでの利害関心
「繊細な良心」と王政復古体制
規律と「コーヒーハウスの哲学」
「手と目の論争」—— 実験と弾圧
実験哲学と神の国
暗黒の王国
第8章 科学の政体 —— 結論
謝 辞
監訳者あとがき
註
文献一覧
図版一覧
事項索引
人名索引
書 評
朝日新聞(2024年2月3日付、夕刊、「富永京子のモジモジ系時評」)
『本の雑誌』(2018年12月号、特集「理系本は面白い!」、評者:山本貴光氏)
『日本物理学会誌』(第72巻第12号、2017年12月号、評者:有賀暢迪氏)
『科学史研究』(第56巻第281号、2017年4月号、評者:武田裕紀氏)
『イギリス哲学研究』(第40号、2017年3月、評者:中野安章氏)
『総合文化研究』(第20号、2017年3月、評者:鈴木聡氏)
『化学史研究』(第44巻第1号、2017年、評者:中澤聡氏)
『週刊読書人』(第3170号、2016年12月23日、評者:横山輝雄氏)
関連書
『科学ジャーナルの成立』 アレックス・シザール 著/柴田和宏 訳/伊藤憲二 解説
『客観性』 ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン 著/瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』 ピーター・ギャリソン 著/松浦俊輔 訳
『20世紀物理学史【上巻】』 ヘリガ・カーオ 著/岡本拓司 監訳/有賀暢迪・稲葉 肇 他訳