内 容
栄光と失敗、論理と閃きのダイナミクスとしての「物理学の世紀」。量子力学と相対論という二大革命に始まり、社会と関わりながら大展開を遂げる100年を一望する、待望の書。上巻では世紀前半に主張された数々の知られざる異説を紹介しつつ、変革の前史と進展を扱う。
訳者一覧
(*は監訳者)
*岡本拓司 杉本 舞
有賀暢迪 山口まり
稲葉 肇 金山浩司
小長谷大介 中尾麻伊香
目 次
はしがき
第Ⅰ部 地固めから革命へ
第1章 世紀末の物理学
—— 揺らぐ世界像
第2章 物理学の世界
ヒトとカネ
物理学の学術誌
ある日本人の見たヨーロッパの物理学
第3章 気体中の放電と、それに続いたもの
新種の光線
ベクレル線から放射能へ
ニセ放射線もろもろ
トムソン以前の電子
最初の素粒子
第4章 原子構造
トムソン原子
別の初期原子モデルたち
ラザフォードの原子核
原子構造の量子論
第5章 量子論のゆるやかな出現
黒体輻射の法則
量子仮説についての初期の議論
アインシュタインと光子
比熱と1913年までの量子論の状態
第6章 低温物理学
零度へのレース
カメルリング・オネスとライデン研究所
超伝導
第7章 アインシュタインの相対論と、ほかの人々の相対論
ローレンツ変換
アインシュタイン相対論
特殊相対論から一般相対論へ
受 容
第8章 失敗に終わった革命
電磁質量の概念
世界観としての電子論
質量変化の実験
一つの世界観の凋落
統一場の理論
第9章 産業と戦争における物理学
工業物理
働く電子、その1 —— 長距離電話
働く電子、その2 —— 真空管
化学者の戦争の中の物理学
第Ⅱ部 革命から地固めへ
第10章 ヴァイマル共和国における科学と政治
科学政策と財政支援
国際関係
物理学者のコミュニティ
時代精神と物理学的世界観
第11章 量子跳躍
量子の変則事例
ハイゼンベルクの量子力学
シュレーディンガーの方程式
普及と受容
第12章 原子核物理学の興隆
電子‐陽子モデル
量子力学と原子核
天体物理学への応用
1932年、奇跡の年
第13章 二つの粒子から多くの粒子へ
反粒子
宇宙線のもたらした驚き
量子論の危機
湯川の重量子
第14章 量子力学の哲学的含意
不確定性と相補性
コペンハーゲン解釈に抗して
量子力学は完全か?
第15章 エディントンの夢、その他の異端
エディントンの本源主義
宇宙数秘術、その他の思弁
ミルンと宇宙物理学
現代のアリストテレス主義者たち
【下巻目次】
第Ⅱ部 革命から地固めへ(承前)
第16章 物理学と新たなる独裁政権
第17章 頭脳の流出・頭脳の流入
第18章 ウランの謎からヒロシマまで
第Ⅲ部 進歩と問題
第19章 核にまつわる話題
第20章 軍事化と巨大潮流
第21章 粒子の発見に次ぐ発見
第22章 基礎理論あれこれ
第23章 宇宙論と相対論ルネサンス
第24章 固体物理学の諸要素
第25章 物理工学と量子エレクトロニクス
第26章 攻撃される科学 —— 危機にある物理学?
第27章 統一と思弁
第Ⅳ部 回 顧
第28章 ノーベル物理学賞
第29章 物理学の世紀を回顧する
日本語版によせて —— 15年後から振り返る
参考文献
訳者あとがき
人名索引
事項索引
書 評
『日本物理学会誌』(第71巻第8号、2016年8月、評者:廣政直彦氏)
『週刊読書人』(第3119号、2015年12月11日付、評者:山本貴光氏)
『20世紀物理学史』
『20世紀物理学史』【下巻】 ヘリガ・カーオ 著/岡本拓司 監訳/有賀暢迪・稲葉 肇 他訳
関連書
『ニュースピークからサイバースピークへ』 スラーヴァ・ゲローヴィチ 著/大黒岳彦 訳/金山浩司 校閲・解説
『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』 ピーター・ギャリソン 著/松浦俊輔 訳