内 容
概念は、人類の幸福に深くかかわる人工物であり、概念工学とは、有用な概念を創造・改定する新たなフレームワークである。本書は基礎的な理論を提示するとともに、「心」「自由意志」「自己」などを例に実践的な議論を展開し、豊饒な学の誕生を告知する。
執筆者
(執筆順、*印は編者)
*戸田山和久(はじめに、第1章、第7章)
*唐沢かおり(はじめに、第2章、第6章)
橋本剛明 (第3章3-1)
鈴木貴之 (第3章3-2)
渡辺 匠 (第4章4-1)
太田紘史 (第4章4-2)
遠藤由美 (第5章5-1)
島村修平 (第5章5-2)
目 次
はじめに
Ⅰ 原 理 編
第1章 哲学の側から Let’s 概念工学!
1 概念工学とは何か
2 カッペレンの「概念工学」と本書の「概念工学」
3 哲学と概念分析 —— いつの間にか始まってしまう概念工学
4 概念工学の実践的重要性 —— 工学とのアナロジーをさらに深める
5 われわれの目指す概念工学はどのように進められるべきか
第2章 心理学の側から Let’s 概念工学!
1 概念工学への協同のお誘いを受けて
2 心理学と概念
3 概念と測定の関係
4 素朴理解への依存がもたらすもの
5 あらためて概念工学に向けて
Ⅱ 実 践 編
第3章 心の概念を工学する
3-1 心理学の側からの問題提起
1 社会心理学と「心の知覚」
2 心の知覚に関する基本的なモデル ——「する心」と「感じる心」
3 心を知覚するとき・しないとき
4 心の知覚と道徳性の関わり
5 おわりに
3-2 哲学の側からの応答
1 心の知覚に関する社会心理学研究 —— 成果と課題
2 心概念に関する概念工学の必要性
3 記述的な概念工学と実践的な概念工学
4 概念工学を実現する2つの方法
5 概念工学的介入の有効性
6 おわりに
第4章 自由意志の概念を工学する
4-1 心理学の側からの問題提起
1 はじめに
2 人々の自由意志概念を捉える
3 哲学者の議論との接点
4 「自由意志が存在する」という信念の影響
5 人々の自由意志概念に関するモデル化
6 新たな自由意志概念に向けて
4-2 哲学の側からの応答
1 自由意志論の係争点 ——「求めるに値する自由」
2 「求めるに値する自由」の心理学的記述
3 記述から指令へ —— 4つのプロジェクト
4 自由意志論の概念工学的性格
5 自由意志の概念工学 —— 超越論 vs 自然主義
6 おわりに
第5章 自己の概念を工学する
5-1 心理学の側からの問題提起
1 「自己」をめぐる2つの現実
2 心理学黎明期の自己研究
3 自己の実証的心理学研究 —— 内観から定量的測定へ
4 自己という概念を構築すること
5 おわりに
5-2 哲学の側からの応答
1 自己の概念工学を始めるために
2 自己という概念を調べる
3 自己という概念をいじってみる
4 自己という概念のポイントを特定する
5 自己という概念のエンジニアリングに向けて
Ⅲ 展 望 編
第6章 心理学者によるまとめと今後に向けて
1 はじめに
2 生活実践と概念工学 —— 心の議論から
3 求めるに値する概念 —— 自由意志の議論から
4 認知対象としての概念と機能を果たす概念 —— 自己の議論から
5 概念工学と心理学、残された課題
第7章 哲学者によるまとめと今後に向けて
1 はじめに
2 「心あるもの」の概念をめぐって
3 自由意志および責任の概念をめぐって
4 自己の概念が概念工学に投げかける問題
5 「概念」概念の概念工学の必要性(何のこっちゃ?)
6 おわりに
あとがき
索 引
書 評
関連書
『誇り高い技術者になろう[第2版]』 黒田光太郎・戸田山和久・伊勢田哲治 編
『科学技術をよく考える』 伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
『自由の余地』 ダニエル・C. デネット 著/戸田山和久 訳