内 容
本書は、マクロな環境問題とミクロな消費行動に関する人々の意識と行動を、環境保全という共益と消費・廃棄という私益との社会的ジレンマの枠組みから捉え、そのジレンマ解決の方途を具体的事例と実験を踏まえて解明する。資源対環境問題にするわが国で初めての社会心理学的研究。
目 次
第1章 資源環境問題への社会心理学的接近
—— 環境についての態度と行動の関連
1 はじめに
2 エネルギー危機下でのひとびとの意識と行動の変化
3 環境にやさしい態度と行動とが食い違う理由
4 本書の構成について
第2章 社会的ジレンマとしての環境問題
—— 環境問題へのゲーム論的接近
1 はじめに
2 環境問題とジレンマゲームでの認知・行動の類似性
3 環境問題における行動を規定する要因
4 結 論
第3章 環境配慮行動を規定する要因とは何か
—— 環境問題についての調査研究の概観
1 はじめに
2 環境配慮行動の個別モデルの特徴
3 環境配慮行動の要因連関モデル
4 4つの地域環境問題の特徴
5 環境認知と環境配慮行動との関連
6 行動評価と環境配慮行動との関連
7 結 論
第4章 環境に配慮した消費の意思決定過程
—— Fishbein & Ajzen の態度・行動モデルの再検討
1 はじめに
2 態度と行動の斉合性に関するこれまでの研究
3 Fishbein & Ajzen の態度・行動モデルの特徴
4 Fishbein モデルの問題点と消費行動との関連
5 環境に配慮した消費行動の意思決定モデル
6 結 論
第5章 渇水事態での節水を左右するのは何か
—— 水消費による便益費用の重層構造
1 はじめに
2 通常時の水使用とそれに関連する認知についての調査
3 渇水事態の推移にともなう節水行動についての調査
4 結 論
第6章 生活排水についての地域住民の態度と行動
—— 琵琶湖汚濁の認知と粉せっけんの仕様
1 はじめに
2 琵琶湖汚染と洗剤使用に関する調査の概要
3 琵琶湖条例の制定前における住民の洗剤使用の推移
4 条例施行後の粉せっけん使用の規定因
5 結 論
第7章 エネルギー危機における買溜めパニック
—— 資源不足への過剰な集合的対処
1 はじめに
2 トイレットペーパーの買溜めパニックの事例分析
3 緊急時における買溜めの意思決定過程
4 買溜めパニックに対する流通システムの安定性の評価
5 結 論
第8章 ゴミ問題についての住民運動の展開
—— 運動体によるアクションとその効果
1 はじめに
2 住民運動の発生の前提条件
3 少数住民による運動の開始
4 住民運動の組織づくりの開始
5 行政への異議申し立てと運動の正当性の獲得
6 運動体の組織充実
7 運動の転換と交渉での合意
8 結 論
第9章 環境ボランティアのアクション・リサーチ
—— 地域リサイクルの普及技法とその効果
1 はじめに
2 ボランティア・グループの形成とその背景
3 リサイクルの普及プロセス
4 ボランティア・グループによるアクションの効果
5 結 論
第10章 環境保全の実践にむけて
—— 環境問題の解決にたいする社会心理学からの貢献
1 はじめに
2 環境配慮行動を促進するための社会心理学的アプローチ
3 環境認知の変容アプローチ
4 態度と行動意図の関連強化のアプローチ
5 行動評価の変容アプローチ
6 おわりに
参考文献
あとがき
事項索引
人名索引