内 容
時代やテーマによる分断をこえ、複雑多岐にわたる国連外交の軌跡を一貫した視座で把握。連盟以降の国際秩序をめぐる構想から、「東西の架け橋」役や紛争調停の実態、組織運営・予算・PKOへの貢献まで、冷戦や国内世論といった文脈も含めトータルに論じ尽くす、未到の通史。二国間外交だけでは見えてこない、もうひとつの日本の姿を浮き彫りにする。
目 次
凡 例
序 章 なぜ日本の国連外交か
—— 歴史的経路から探る
第Ⅰ部 国連外交前史 1933~56年
第1章 新たな世界秩序と国際組織
—— 戦前・戦時中の模索
1 回帰か、創出か
2 連盟との決別をめぐる最後の攻防
3 「新秩序」と国際組織
4 地域組織から地域中心の世界組織へ
5 国連構想と日本の対応
第2章 占領下の対外政策立案と国連
—— 実態のともなわない外交・安全保障論議の中で
1 終戦直後の国連擁護論
2 国連抜きの外交ビジョン
3 憲法改正と国連論議の変容
4 国連中心の安全保障政策の虚実
5 講和・安保論争および朝鮮戦争と国連
6 安保中心から「国連本位」の国連政策へ
7 初期の国連加盟論議
第3章 国連加盟
—— 国際社会への復帰を目指して
1 早期加盟の挫折
2 幻の準加盟案
3 一括加盟の失敗
4 AAグループへの仲間入り
5 加盟工作総仕上げの舞台裏
6 「国連外交」の始動に向けて
第Ⅱ部 国連外交の形成 1956~60年
第4章 華麗なるデビューの光と影
—— 2つの「東西」紛争に直面して
1 米ソ直接対決事案をめぐる外交
2 対AA国連外交の登場
3 冷戦型AA地域紛争と国連外交
4 AA穏健派リーダーとしての是々非々路線と国連外交
5 二国間関係優先志向の芽生え
第5章 初期国連外交の舞台裏
—— 地位、貢献、国内政治
1 名誉ある地位の獲得と選挙
2 憲章改正の模索
3 カネと人による国連貢献のジレンマ
4 安全保障・外交政策をめぐる国内政治と国連
第Ⅲ部 国連外交の進展と変容 1960~78年
第6章 冷戦変動期の国連外交
—— デタント・多極化の時代における模索
1 現実的な国連認識の深化
2 鈍化する軍縮外交
3 アジアの冷戦と国連外交
4 冷戦の論理と一線を画す国連外交
第7章 新興国の台頭と国連外交
——「穏健派」AA大国の葛藤
1 是々非々主義の動揺
2 良き仲介役の努力と苦悩
3 中東紛争をめぐる国連外交の迷走
4 植民地独立問題をめぐる国連内の攻防
5 国連における対アフリカ外交の混迷
第8章 「大国」外交の地歩を固めて
—— 国連内外の進展と課題
1 国連システムの「最高峰」に向かって
2 非常任理事国選出「常態化」戦術の挫折
3 大口貢献者か、「ケチな多額納税者」か
4 悩み深き人的貢献
5 野党の安全保障構想と国連
6 国連外交をめぐる政策と世論の乖離
第Ⅳ部 新時代に備える国連外交 1978~89年
第9章 東西冷戦の変容と国連外交
——「新冷戦」から「ポスト冷戦」へ
1 変革期の国連認識
——「政治的役割」の追求と「国際協力構想」
2 「均衡」重視の軍縮外交の継続
3 朝鮮半島問題をめぐる抑制的な「代理人外交」
4 アフガニスタン紛争解決への関与
—— 平和の創出と維持をめぐる協力
5 カンボジア紛争と和平への関与
——「脇役」から「主役」へ
第10章 地域紛争の尖鋭化と国連外交
—— 既定路線の踏襲から主体性の発揮へ
1 アジア・中東の懸案をめぐる国連審議と日本
2 アフリカの懸案をめぐる従来路線の維持と強行
3 新たな地域紛争と国連外交の新展開
第11章 国連に「貢献」する大国像の模索
—— 地位優先より実績優先へ
1 国連改革をめぐる現実路線の形成
2 人的協力の限界と進展
3 国連行財政危機と日本のリーダーシップの芽生え
4 国内環境の変容
終 章 戦後日本外交における国連
—— 多国間外交のダイナミクスを再考する
1 調整装置としての国連
2 外交の「場」としての国連
3 今後の研究に向けて
注
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引
書評等
『週刊エコノミスト』(2024年4月16・23日合併号、評者:井上寿一氏)
関連書
『グローバル冷戦史』 O・A・ウェスタッド 著/佐々木雄太 監訳/小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳