内 容
文化交流への国家の関与という、内外・硬軟が交差する繊細な領域を分析する理論枠組みを示すとともに、冷戦期に発展したドイツの先端的とりくみに注目。戦後復興とナチの過去、東西競争や外国人問題を背景とする政策形成過程と具体的実践をつぶさに検証し、現代日本の文化運営にも示唆を与える意欲作。
目 次
序 章 〈文化外交〉とドイツの経験
第Ⅰ部 〈文化外交〉へのアプローチ
第1章 国際文化関係運営行為としての〈文化外交〉
1 国際関係における文化 —— 方法面の二元性と意味の多元性
2 〈文化外交〉の分析枠組み
3 〈文化外交〉の歴史的展開
4 〈文化外交〉の逆説=
第2章 ドイツの対外文化政策とその巨視的展開
1 研究状況
2 今日の概要と特徴
3 伝統と歴史的発展
4 旧東ドイツの対外文化政策
第Ⅱ部 ゆるい〈文化外交〉の公的原則形成
第3章 冷戦下の対外文化政策
1 「外交の第三の柱」へ
2 アデナウアー-エアハルト政権下の外務省
3 〈文化外交〉関係者の感覚変化
4 大連立政権期の外務省
第4章 ダーレンドルフ改革とその挫折
1 改革の概要
2 「まじめなとりくみ」が開いたパンドラの箱
3 同時代のインパクトと今日の評価
第5章 連邦議会調査委員会による民主的裏づけ
1 調査委員会の概要
2 各議会期の作業と成果文書
3 対外文化政策をとりまく環境の変化
4 対外文化政策の形成発展における調査委員会の意義
第6章 ハム=ブリュッヒャー政務次官の奮闘と新原則の定着
1 新たなキーパーソン
2 『答申』の作成 —— ゆるい〈文化外交〉公定化の仕上げ
3 「シンポジウム’80」—— 西ドイツ対外文化政策を世界へ
4 アウターサークルでの批判 ——〈文化外交〉への民主的統制の強化
5 『ポルトガル日記』問題 —— ゆるい〈文化外交〉のはらむ対立・葛藤
第7章 公的原則策定の裏側
1 国際関係と国内政治 —— キーパーソンを動かした/制約した要因
2 新しい文化政策、文化の民主化 —— 大きな潮流との連関
3 刷新と伝統 —— エスニック・ナショナルな文化振興の継承
4 国境外の「ドイツ文化」—— 対外文化政策のグレーゾーン
第Ⅲ部 ゆるい〈文化外交〉の展開
第8章 社民リベラル政権における実践と応用
1 自由とパートナーシップの重視 ——「シュテック事件」
2 「モデル文化会館」設立の試み —— 東京ドイツ文化会館設立
3 「第三世界」との文化的パートナーシップ模索
——『10のテーゼ』策定
4 〈文化外交〉と「外国人問題」のリンク
——「国内での対外文化政策」構想
5 4つの事例が示唆すること
第9章 1980年代以降における対外文化政策の展開
1 政権交代後の路線論争
2 国際文化関係運営の広がり
3 統一ドイツの対外文化政策
終 章 国際文化関係運営における「ゆるさ」のメリット
あとがき
注
参考文献
略語一覧
図表一覧
索 引
書 評
『図書新聞』(2024年8月17日号、第3652号、評者:芝崎祐典氏)