内 容
「現実主義」対「理想主義」をこえて——。国際関係を権力闘争に還元する見方も、「悪」の侵略国に対する「善」なる制裁という見方も説得力を失った。合衆国における戦争違法化思想をトータルに跡づけ、忘却された戦間期のラディカルな展開を再考することで、国際秩序の新たな可能性を探る。
目 次
序 章 アメリカにおける戦争違法化思想
—— 否定から再評価へ
1 先行研究
2 本書の意義
3 本書の構成
第Ⅰ部 19世紀~20世紀転換期
—— アメリカにおける戦争違法化思想の発展
第1章 黎明期のアメリカ平和運動
——「世界最高裁」の夢
1 ウィリアム・ラッドの「諸国家の裁判所」
2 仲裁裁判の普及 —— モホンク湖国際仲裁裁判会議
3 仲裁裁判から司法裁判へ ——「世界最高裁」の夢
4 第1回ハーグ万国平和会議 —— ハーグ常設仲裁裁判所の設立
5 第2回ハーグ万国平和会議 ——「世界最高裁」の夢の継続
6 ハーグの法廷に「牙」を —— 初期の「国際警察」論
7 世紀転換期の「国際警察」論 —— 根本的な楽観
8 「法による支配」の範囲 ——「文明」国と「未開」国
第2章 第一次世界大戦
——「平和の強制」の観念の浮上
1 第一次世界大戦の衝撃
2 平和強制連盟の創設
3 世界法廷連盟 ——「平和の強制」への反発
4 ウッドロー・ウィルソン大統領の「力の共同体」
5 ハーグ常設国際司法裁判所の設立 ——「世界最高裁」の夢の復権
第Ⅱ部 1920年代
—— 国際連盟とアメリカの戦争違法化思想の競合
第3章 サーモン・O・レヴィンソンの戦争違法化思想
1 「戦争の法」から「戦争に反対する法」へ
2 唯一の制裁としての「道義的制裁」
3 侵略戦争の違法化
—— ジェームズ・T・ショットウェルの戦争違法化論
4 戦争違法化思想と自衛
5 戦争違法化思想と帝国主義
第4章 パリ不戦条約
——「強制によらない平和」の追求
1 パリ不戦条約の成立
2 「諸国家のキス」としての不戦条約
3 不戦条約の盲点 ——「現状維持」としての平和
4 不戦条約とモンロー・ドクトリン
5 ショットウェルの不戦条約観 —— 戦争違法化と懲罰
6 「アメリカン・ロカルノ」の夢
7 カッパー決議案 —— 不戦条約に「牙」を
第Ⅲ部 1930年代~第二次世界大戦
—— 戦争違法化思想の危機
第5章 危機の時代の戦争違法化思想
1 不戦条約と国際連盟規約の調和
2 満洲事変と不承認政策
3 満洲事変とショットウェル ——「強制によらない平和」の破綻
4 満洲事変とレヴィンソン ——「平和の制裁」
5 「平和の制裁」と中立主義
6 国際連盟改革への期待と挫折
7 第二次世界大戦前夜の戦争違法化思想 ——「現実主義」への目覚め
8 エドウィン・M・ボーチャードの「現実主義」—— カーからモーゲンソーへ
第6章 戦争違法化思想の否定・忘却
1 第二次世界大戦の勃発 ——「平和の強制」論の勝利
2 平和組織を研究するための委員会 ——「超暴力」としての平和
3 戦争違法化運動の終焉
4 現実主義外交の時代へ
5 戦争違法化思想の忘却
終 章 今日の世界と戦争違法化思想
1 戦争違法化思想の今日的意義
2 戦争違法化思想とアメリカ例外主義
あとがき
注
引用文献一覧
図版一覧
索 引
英文要旨
英文目次
受 賞
書 評
「NHK出版新書を探せ!」(第8回、2020年10月28日、インタビュー記事)
『国際法外交雑誌』(第115巻第1号、2016年、評者:篠田英朗氏)
『アメリカ太平洋研究』(第16号、2016年3月、評者:佐々木卓也氏)
『アメリカ研究』(第50号、2016年3月、評者:篠原初枝氏)
『アメリカ史評論』(第33号、2015年11月、評者:倉科一希氏)
『国際政治』(第181号、2015年9月、評者:高光佳絵氏)
『年報政治学2015-Ⅰ』(2015年6月、評者:岡山裕氏)