内 容
大恐慌への対応を批判され、無能とされた大統領。しかし人道支援・環境保護などの先駆的政策は、今日狭く理解されがちな「人間の安全保障」の源流でもある。共和党右派、マッカーサー、アイゼンハワーなどの米国政治の群像を鮮やかに捉え、日本の占領政策にも新たな光を投げかける。
目 次
序 章 フーヴァーによる総合安全保障政策の構想とその展開
1 米国における総合安全保障政策の起源と系譜
2 フーヴァーの活動の背景
第1章 立身出世と人道支援活動
1 鉱山技師としての成功
2 第一次世界大戦下のベルギー支援
第2章 人道支援から総合安全保障の模索へ
1 食糧局時代のフーヴァーとその側近たち —— タフトとストロース
2 救済局時代のフーヴァーとその側近たち —— ハーターとペイト
3 米国救済局と欧州・ロシア
4 テイラー主義
5 ボルシェビキ政権への食糧支援
おわりに
第3章 政治家フーヴァー
—— 第一次世界大戦後の対応から大統領へ
1 フーヴァーとローズヴェルト
2 フーヴァーと1920年代の国内経済政策
3 戦間期の米国と東アジア —— 軍縮と地域紛争
4 フーヴァー政権と極東における紛争 —— 中ソ紛争、満洲事変
5 誤解された大統領 —— フーヴァーと大恐慌
おわりに
第4章 米国のフィリピン防衛
—— マッカーサー、アイゼンハワー、フェラーズ
1 マッカーサーの政治的源流
2 マッカーサーのフィリピン防衛計画
3 フィリピン国防計画をめぐる対立 —— マッカーサー、フェラーズとアイゼン
ハワー
4 アイゼンハワーの帰国とフィリピン国防計画の軌道修正
5 帰国後のフェラーズ
6 1940~41年のフィリピン防衛政策
おわりに —— フェラーズとフーヴァー
第5章 ジョン・フォスター・ダレス
—— 共和党右派と穏健派の間
1 ダレスの外交思想
2 戦前からの連続性
第6章 米国参戦に至るローズヴェルト外交とフーヴァー
1 欧州情勢介入をめぐる論争
2 対東アジア外交の分岐点
3 モーゲンソーと対枢軸国経済戦争
4 ローズヴェルトと昭和天皇
5 フーヴァーと天皇宛親電に至る経緯への関与
6 日米妥協の可能性 —— 12月上旬の野村・来栖
おわりに
第7章 共和党右派とマッカーサー大統領候補擁立運動
—— 1941~44年
1 日米開戦とマッカーサー ——「英雄」への道
2 戦時中のマッカーサー大統領候補擁立運動
第8章 第二次世界大戦の終結とフーヴァーの政治的復活
1 ドイツ降伏と日本の無条件降伏をめぐる米国内論争
2 フェラーズの日本に対する認識
3 フーヴァーと米国政府内の政策論争
4 日本の国内動向
5 米軍の動向とフェラーズ
6 天皇の「聖断」の影響
7 マッカーサーと対日占領
おわりに —— 東京裁判開廷前後と天皇宛親電人脈
第9章 戦後のマッカーサー大統領候補擁立運動
1 水面下で続いたマッカーサー大統領候補擁立運動
2 マッカーサー大統領候補擁立運動の展開
3 マッカーサーの静観姿勢
4 革新主義とマッカーサー
おわりに
第10章 共和党右派と共和党穏健派・リベラリズム支持派との攻防
1 一般軍事教練問題
2 タフトとパレスチナ問題
3 共和党右派 —— 1945~50年代
4 ウィリアム・バックレー —— 赤狩りの時代
5 共和党右派の衰退
おわりに
第11章 米国政治の長老フーヴァー
—— 対ソ政策、世界食糧調査団、行政改革
1 対ソ政策と世界食糧調査団 —— 日本とドイツの経済的立て直し
2 国防をめぐる行政改革
3 大統領府と各省庁をめぐる行政改革
終 章 フーヴァーの生涯とその遺産
あとがき
注
索 引
書 評
『アメリカ学会会報』(第198号、2018年11月、評者:山澄亨氏)
『史学雑誌』(第127編第9号、2018年9月、評者:アン・ジェイク氏)