内 容
日本からヨーロッパまで ——。世界史上、空前のレベルで展開したユーラシアを貫く「知」の交流。百科事典や辞書・地図から宗教・政治・経済の諸制度まで、モンゴル帝国によるダイナミックな革新と統合の実像を、多言語の文献・美術品・出土文物を駆使して描き出す記念碑的労作。
目 次
口絵解説 —— 序にかえて
第Ⅰ部 日出づる処の資料より
第1章 対馬宗家旧蔵の元刊本『事林広記』について
1 はじめに
2 宗家の『事林広記』
3 泰和律令と至元大典 —— 南北の「知」の統合
4 むすびにかえて
第2章 叡山文庫所蔵の『事林広記』写本について
1 はじめに
2 比叡山延暦寺恵心院の『事林広記』
3 衝撃の別集巻二「官制類」
4 クビライ時代初期の官僚制
5 おわりに
附論1 陳元靚『博聞録』攷
附論2 新たなる『事林広記』版本の発見にむけて
第3章 江戸時代に出土した博多聖福寺の銀錠について
第4章 『卜筮元亀』とその周辺
第Ⅱ部 大元ウルスの宗教政策
第5章 歴代カアンと正一教
——『龍虎山志』の命令文より
1 はじめに ——『龍虎山志』簡介
2 モンゴル朝廷と正一教
1)世祖クビライ時代
2)成宗テムル時代
3)武宗カイシャン時代
4)仁宗アユルバルワダ時代
3 命令文の体式
4 石の齢を越えて
第6章 庇護される孔子の末裔たち
—— 徽州文書にのこる衍聖公の命令書
1 はじめに
2 孔端朝とその後裔
3 衍聖公の命令書
4 むすびにかえて
第7章 地方神の加封と祭祀 ——『新安忠烈廟神紀実』より
1 はじめに
2 『新安忠烈廟神紀実』簡介
3 至元二十五年の道仏闘争
1)楊璉真珈の発給文書二件
2)解 説
4 加封申請への道
1)徽州路総管府の保管文書四件
2)解 説
5 おわりに
第Ⅲ部 ケシクからみた大元ウルス史
第8章 バウルチたちの勧農政策
——『農桑輯要』の出版をめぐって
1 はじめに
2 クビライ時代の勧農政策
1)ヴェールを脱いだ高麗版『農桑輯要』
2)大司農司の設立
3)『農桑輯要』の編纂
4)大司農司の浮沈
5)東西文化の交流
6)ボロトが去って
3 成宗テムル以降の勧農政策
1)江南開発の中で
2)王禎と『農書』
3)元刊大字本『農桑輯要』とその咨文
4)苗好謙と『栽桑図説』
5)魯明善と『農桑撮要』の出版
6)見直されるべき泰定帝イスン・テムルの治世
7)度重なる政変の中で
8)二世、三世の大司農司
4 むすびにかえて ——『事林広記』が語ること
第9章 ブラルグチ再考
—— カネとちからの闘争史
1 はじめに
2 建前の世界のブラルグチ
3 ブラルグチの実態
1)不蘭奚と闌遺
2)路・府・州・県における遺失物管理
3)権力闘争のなかで
4)ブラルグチたちの横暴
4 おわりに
第10章 モンゴル・バクシとビチクチたち
1 はるかなる匈奴の記憶
2 モンゴル命令文の世界
3 『書記規範』の任命書
(下巻目次)
第Ⅳ部 ユーラシア東西の文化交流
第11章 移剌楚才『西遊録』とその周辺
第12章 フレグ大王と中国学 —— 常徳の旅行記より
附 論 マラーガ司天台と『イル・カン天文表』について
第13章 モンゴル王族と漢児の技術主義集団
第14章 『元典章』が語るフレグ・ウルスの重大事変
第15章 ユーラシア東西における度量衡統一の試み
第16章 ジャライル朝の金宝令旨より
第Ⅴ部 ラシードゥッディーンの翻訳事業
第17章 ラシードゥッディーンが語る南宋接収
第18章 ラシードゥッディーンの農書に見える中国情報
第19章 Tanksūq nāmah の『脈訣』原本を尋ねて —— モンゴル時代の書物の旅
第20章 Tanksūq nāmah の「序文」抄訳
あとがき
初出一覧
図表一覧
人名索引
図書索引
事項・術語索引
受 賞
書 評
『東洋史研究』(第78巻第4号、2020年3月、評者:宇野伸浩氏)
『史林』(第102巻第4号、2019年7月、評者:大塚修氏)
『モンゴル時代の「知」の東西』
著者の既刊書
関連書
『カーシャーニー オルジェイトゥ史』 大塚 修・赤坂恒明・髙木小苗・水上 遼・渡部良子 訳註