内 容
紙とは異なる簡牘(=木簡・竹簡のこと)という文書の特性から、書記官のあり方、書体・書法や書芸術の誕生、そして何よりも帝国を支える徹底した文書行政の実態を、文書の伝達・人の動き・物の管理にわたり、明晰な論理と緻密な考証によって蘇らせた労作。
目 次
凡 例
緒 言
第Ⅰ編 簡牘の形態と機能
—— 視覚簡牘への展望
第1章 簡牘の時代とその終焉
はじめに
1 論語の錯簡
錯簡はいつ生じたのか
2 韋編三絶
(1)韋編とはなめし革か?
(2)「韋編三絶」の意味の変遷
小 結 —— 青絲・青嚢から青帙・青紙へ
第2章 視覚簡牘の誕生
—— 簡の長さについての一考察
1 簡牘の長さの概観
2 尺一詔の始まり
3 三尺之律
4 経書の長さ
小 結
第3章 檄書攷
—— 視覚簡牘の展開
はじめに
1 檄の考察 ——「卅井關守丞匡檄」
2 檄と検
3 檄とは何か —— その機能と効果
(1)印について
(2)「日時在檢中」の意味
(3)露布の効果
4 もう一つの檄 —— 掲示の檄
(1)候史廣德行罰檄
(2)玉門花海出土皇帝遺詔
(3)多面体急就篇
小 結
第Ⅱ編 書記とその周辺
第1章 書記官への道
—— 漢代下級役人の文字習得
はじめに
1 江陵張家山二四七号墓出土漢律令の史律
2 「史」と「不史」、「能書會計」
3 文書の傳達
4 扁書と諷誦——文書行政と口頭傳達
(1)「扁書」とは
(2)行政文書の最終地点
5 『急就篇』と『千字文』
小 結
第2章 書体・書法・書芸術
—— 行政文書が生み出した書芸術
はじめに——書芸術の成立条件
1 書体の名称——隷書・草書・楷書
2 木簡が語る書法と習書
(1)懸針と波磔
(2)習書簡
(3)木簡に見える草書
3 行政文書から書芸術へ
小 結
第3章 行政文書の書式・常套句
はじめに
1 書き止め文言
(1)「如律令」
(2)「毌以它爲解」「毌忽」「以急疾爲故」
(3)「有書」「有敎」
2 文書送達と慣用文言
(1)検面表記と逓傳
(2)行者走・吏馬馳行・馬馳行など
(3)「發」について
3 自筆署名と副本作成
小 結
第Ⅲ編 漢代行政制度考証
第1章 漢代の地方行政
——- 漢簡に見える亭の分析
はじめに
1 辺境出土簡に見える「亭」
(1)「亭」「亭燧」「郵亭」等の語義
(2)エチナ川流域の亭の実態と機能
(3)辺境の郵亭 —— 以郵行・以亭行
2 地方行政制度における亭制
(1)尹湾出土簡および文献史料からの考察
(2)郷・亭・里制度再考 ——「十里一亭」をめぐって
小 結
第2章 通行行政
——通行証と関所
はじめに
1 文献史料に見える「傳」とその注釈
2 簡牘資料に見える「傳」——辺境出土木簡を中心にして
(1)申請手続き
(2)「傳」の書式
(3)傳の送達
(4)傳と符・致
3 漢代の関所 —— とくに辺境を中心として
(1)肩水金関出土木簡の分析
(2)居延県索関
(3)玉門関の所在をめぐって
小 結
第3章 食糧支給とその管理
—— 漢代穀倉制度考証
はじめに
1 居延地方の穀物倉
(1)倉の種類と配置
(2)倉官
(3)倉の管理
2 食糧支給の実態
(1)支給額
(2)大石と小石
(3)支給対象
(4)簿籍
3 睡虎地秦律の穀倉
(1)倉律・效律の二・三の条文
(2)倉律(88~94簡)の解釈
小 結
結 論
注
あとがき
引用図版一覧
引用簡牘一覧
索 引
中文要旨