内 容
人・モノ・情報が行き交う ——。世界史上、空前のレベルで展開したユーラシアを貫く「知」の交流。歴史・天文・医学・農学などの諸学振興からラシードゥッディーンの翻訳事業まで、モンゴル帝国による巨大な事績を、漢籍やペルシア語古写本など多言語史料により描き出す記念碑的労作。
目 次
第Ⅳ部 ユーラシア東西の文化交流
第11章 移剌楚才『西遊録』とその周辺
1 胡乱な旅行記
2 疑惑の出版
3 『西遊録』、日の目を見る
4 誰もがめざす鉄門関
5 楚才の見聞
6 鎌倉幕府の参考書
第12章 フレグ大王と中国学
—— 常徳の旅行記より
1 「世界史」の目撃者
2 背負い込んだタブー
3 モンケの大構想
4 いざ、西へ
5 新たなる資料の出現
附論 マラーガ司天台と『イル・カン天文表』について
第13章 モンゴル王族と
1 はじめに —— クビライ軍の診療カルテより
2 羅天益と史天沢の幕僚たち
3 尊ばれる医卜
4 多芸多才たれ —— 序文からみえてくる技術主義
5 金朝の閉鎖性
6 モンゴル王族と全真教
7 イスラーム科学との接点 —— ソルコクタニの庇護
8 もうひとつの接点 —— ヤラワチ父子の貢献
9 おわりに
第14章 『元典章』が語るフレグ・ウルスの重大事変
1 はじめに
2 世祖クビライの聖旨訳註
1)チンギス・カンの
2)ターラービーの叛乱
3)サイフゥッディーン達の誅殺
4)パルヴァーナの陰謀
5)めぐりあう東西文献
3 クビライとフレグ・ウルス
4 『集史』が語る後日談
第15章 ユーラシア東西における度量衡統一の試み
1 はじめに
2 大元ウルスの文書二件
3 『集史』にのこるガザンの令旨
第16章 ジャライル朝の金宝令旨より
1 はじめに
2 書誌について
3 文書校訂と訳
4 語 釈
第Ⅴ部 ラシードゥッディーンの翻訳事業
第17章 ラシードゥッディーンが語る南宋接収
1 『集史』第二部「中国史」の種本
2 ラシードゥッディーンと「中国史」
3 「南宋・東南アジア遠征」の記事
4 ガザン政権が語りたかったこと
5 日本にのこる資料との連動
第18章 ラシードゥッディーンの農書に見える中国情報
1 はじめに
2 モンゴル軍の兵糧
3 桑の栽培 ——「樹木の諸事情の知識について」より
4 茶の栽培 ——「印土と震旦の樹木」より
5 芳香剤と香辛料
第19章 Tanksūq nāmah の『脈訣』原本を尋ねて
—— モンゴル時代の書物の旅
1 はじめに
2 室町時代の資料にのこる『晞范脈訣』
3 『晞范脈訣』の挿絵と佚文
4 こんごに向けて
第20章 Tanksūq nāmah の「序文」抄訳
1 はじめに
2 日本語訳と註
あとがき
初出一覧
図表一覧
人名索引
図書索引
事項・術語索引
(上巻索引)
口絵
口絵解説 —— 序にかえて
第Ⅰ部 日出づる処の資料より
第1章 対馬宗家旧蔵の元刊本『事林広記』について
第2章 叡山文庫所蔵の『事林広記』写本について
附論1 陳元靚『博聞録』攷
附論2 新たなる『事林広記』版本の発見にむけて
第3章 江戸時代に出土した博多聖福寺の銀錠について
第4章 『卜筮元亀』とその周辺
第Ⅱ部 大元ウルスの宗教政策
第5章 歴代カアンと正一教 ——『龍虎山志』の命令文より
第6章 庇護される孔子の末裔たち —— 徽州文書にのこる衍聖公の命令書
第7章 地方神の加封と祭祀 ——『新安忠烈廟神紀実』より
第Ⅲ部 ケシクからみた大元ウルス史
第8章 バウルチたちの勧農政策 ——『農桑輯要』の出版をめぐって
第9章 ブラルグチ再考 —— カネとちからの闘争史
第10章 モンゴル・バクシとビチクチたち
受 賞
書 評
『東洋史研究』(第78巻第4号、2020年3月、評者:宇野伸浩氏)
『史林』(第102巻第4号、2019年7月、評者:大塚修氏)
『モンゴル時代の「知」の東西』
著者の既刊書
関連書
『カーシャーニー オルジェイトゥ史』 大塚 修・赤坂恒明・髙木小苗・水上 遼・渡部良子 訳註