内 容
芸能から魔界まで ——。絵巻や曼荼羅、物語や儀礼のなかで生動する男女・仏神・異類たち。それらの存在を支えた世界像とはいかなるものだったのか。説話や音楽から、性や童子、さらには聖地・霊地まで、時代とともに揺れ動く文化の諸相を一望し、中世的世界を多面的にとらえた渾身の書。
目 次
序 章 はじまりのテクスト
総説Ⅰ 中世日本の世界像
はじめに ——『信貴山縁起』絵巻の世界から
1 行基日本図から聖徳太子絵伝の世界像へ
2 三国伝来の生身仏縁起 —— 善光寺阿弥陀と清凉寺釈迦
3 三国世界観の言説化と図像化
4 曼荼羅縁起と天神縁起の世界像
5 巡礼/回国する聖たち
6 勧進により建立される中世世界
総説Ⅱ 中世的世界の形成
はじめに —— 年代記という座標から
1 法勝寺をめぐって
2 宝蔵と知の類聚
3 祝祭と霊地参詣および勧進
第Ⅰ部 芸能の世界像
第1章 中世の音声と音楽
—— 聖なる声
1 神々の声
2 仏法の声
3 今様の声
4 融けあう神と仏の声
5 神/仏を歌う聖
第2章 中世の童子と芸能
——〈聖なるもの〉と童子
1 遊ぶこどもの声
2 天神と童子
3 観音と童子
4 童 行 者
5 逸脱する童子
第3章 中世の性と異性装
—— 性の越境
1 神と英雄の異性装
2 結界破りの女
3 芸能における性の越境
4 性を越境する物語
第4章 中世の王権と物語
—— 注釈と日本紀
1 日本紀という運動
2 中世注釈の重層性
3 「日本紀」と「日本国大将軍」
第Ⅱ部 知の世界像
第5章 中世的知の形態
—— 説話の位相
1 何ものかをもたらす〝説話〟
2 〝説話〟という枠組
3 物語の〝説話〟化
4 媒介としての〝説話〟と中世説話集の成立
5 潜在する枠組 —— 学問体系の中の〝説話〟
第6章 中世的知の様式
—— 日本における対話様式の系譜
1 対話様式テクスト論
2 宗教テクストの方法としての対話様式
3 語られたテクストと語りを書くテクスト
第7章 中世的知の集成
—— 寺院聖教の世界
1 次第を読む
2 中世寺院における知的体系の展開
第8章 中世的知の統合
—— 慈円作『六道釈』をめぐりて
1 承久の乱まで
2 『六道釈』解題
3 承久の乱の後
4 二十五三昧と和歌
三千院円融蔵『六道釈』翻刻
第Ⅲ部 仏神の世界像
第9章 中世の仏神と曼荼羅
—— 密教と神仏習合の世界
1 霊地の図像学
2 神道曼荼羅の構造と象徴体系
第10章 中世の霊地と縁起
—— 元興寺と長谷寺
1 元興寺の縁起と伝承
2 長谷寺の縁起と霊験記
第11章 中世の浄土と往生伝
—— 冥界をめぐるテクスト
1 浄土願生者の夢と冥界巡り
2 山中他界の夢 —— 浄土と地獄の往来
3 霊地の宗教空間とその運動 —— 南北軸と東西軸の焦点
4 霊験所に顕われる像 —— 影向と感得
5 往生を妨げるもの ——『発心集』における往生と魔
6 往生する西行というテクスト
第12章 中世の魔界と絵巻
——『七天狗絵』とその時代
1 釼阿写本と絵巻
2 『七天狗絵』を読む
3 抗争するテクスト
4 『七天狗絵』の亀裂
終 章 中世世界像の鏡
—— 縁起絵巻というメディア
注
あとがき ——「中世日本の世界像」縁起
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図版一覧
事項索引
人名・神仏名索引
書 評
『日本文学』(2018年10月号、第67巻第10号、評者:柏原康人氏)