内 容
天台宗の「百科全書」とも言われる『渓嵐拾葉集』は、仏教教理のみならず多くの説話や巷説、和歌を含み、中世の思想・文学・歴史の一大資料となっている。その作者・ 諸本・成立背景等を明らかにするとともに、説話の場に光をあて、同書を結節点とする中世文化のネットワークに迫る。
目 次
はじめに
第Ⅰ部 『渓嵐拾葉集』の基礎的研究
第1章 光宗と『渓嵐拾葉集』
1 作者・光宗について
2 記家の発展と中古天台
3 『渓嵐拾葉集』について
4 『渓嵐拾葉集』の享受史
第2章 『渓嵐拾葉集』の諸本
はじめに
1 『国書総目録』と『昭和現存天台書籍綜合目録』から
2 近世編纂本の成立
3 転写本の成立と性格
4 「古本」以外の転写本
補論 禿氏祐祥氏本の独自記事について
第3章 『渓嵐拾葉集』関東所伝本の性格
1 関東所伝本とは何か
2 談義所との関係
3 関東所伝本の実用的性格
4 「求聞持法」の受容
おわりに
第四章 『渓嵐拾葉集』と『秘密要集』
はじめに
1 運海について
2 『秘密要集』の誕生
3 『秘密要集』と『渓嵐拾葉集』
4 記家と戒家
第Ⅱ部 『渓嵐拾葉集』の説話世界
第5章 天台口伝法門と説話
——『渓嵐拾葉集』の「物語云」をめぐって
はじめに
1 天台口伝法門と説話
2 談義の中の「物語」
3 口伝と「物語」の相克
4 「物語」の位相
5 「物語」から「因縁物語」へ
第6章 『渓嵐拾葉集』にみる情報収集の諸相
はじめに
1 「或東寺真言師」、「東寺人」という情報源
2 他寺とのつながり
3 「世間」とのつながり
4 光宗の実体験に基づく情報
おわりに
第7章 『渓嵐拾葉集』における王権と神祇
—— 神璽の箱をめぐる一説話から
はじめに
1 後二条天皇と両統迭立
2 鳴 動
3 箱の中身
4 独古と日本図
おわりに
第8章 『渓嵐拾葉集』における「怪異」の諸相
——「怪異」を記述すること
はじめに
1 天 狗
2 狐
3 その他の「怪異」
おわりに
第9章 『渓嵐拾葉集』と『太平記』
—— 行基と波羅門僧正の贈答歌をめぐって
はじめに
1 行基と波羅門僧正との贈答歌の変遷
2 『太平記』の「誤謬」
3 天台律僧団と贈答歌
4 恵鎮と『太平記』
おわりに
第10章 「第四静慮」の和歌と説話
——『入道右大臣集』、『袋草紙』、そして『渓嵐拾葉集』
はじめに
1 「袋草紙本」と現存本『入道右大臣集』
2 恵亮と桜の歌
3 「式部、最後ノ歌」について
4 「落花」と児の歌
おわりに
付録1 光宗略年譜
付録2 光宗著作一覧
付録3 運海略年譜
付録4 運海の血脈
あとがき
索 引