内 容
湯施行する皇后の姿が意味するものは何か。女人禁制と推参する女、あるいは慈童説話の本質とは。—— 性による疎隔や媒介の亀裂に垣間見られる〈聖なるもの〉を求めて、生成変化する中世の物語・説話、縁起・伝承、図像・芸能の奥深い森に分け入り、その深層の構造を明らかにした労作。
目 次
序 章 越境する女人
——『死者の書』と中将姫物語をめぐりて
1 南家郎女の越境
2 中将姫の推参
第1章 湯屋の皇后
—— 光明皇后湯施行の物語をめぐりて
1 巡礼記
2 縁起絵
3 聖者伝
4 霊験記
5 参詣記
6 禁制状
第2章 女人禁制と推参
—— トラン尼伝承と結界侵犯の物語をめぐりて
1 女人禁制の説法
2 トラン尼伝承
3 叡山と高野山のトラン尼
4 高野巻
5 結界侵犯の劇
6 常盤問答
7 推参する女
第3章 聖俗を遊戯する女人
—— 遊女・白拍子・曲舞の芸能をめぐりて
1 江 口
2 室 君
3 海 人
4 祇 王
5 百 万
6 山 姥
第4章 神秘の霊童
—— 児物語と霊山の縁起をめぐりて
1 慈童説話の構造
2 児物語の世界
3 中世寺院と児
4 慈円と児
5 一児二山王
第5章 山に行う聖と女人
——『信貴山縁起絵巻』と東大寺・善光寺をめぐりて
1 『信貴山縁起絵巻』 の達成
2 空鉢譚 —— 山に行う聖の威験
3 聖とその姉 —— 陰陽和合の表象
4 聖の行う山 —— 東大寺・二月堂
5 聖の本質 —— 信濃善光寺
6 聖と女人禁制および推参
7 『信貴山縁起絵巻』讃
第6章 道祖神と愛法神
—— 敬愛の神々とその物語をめぐりて
1 道祖神
2 阿小町
3 吒枳尼
4 狐媚譚
終 章 龍蛇と化す女人
——『華厳縁起絵巻』と『道成寺縁起絵巻』をめぐりて
1 ふたつの「縁起」絵
2 還向作法
3 “性の神話” としての「道成寺」
注
あとがき
初出一覧及び関連論文目録
図版一覧