内 容
私たちの歴史意識はどのように形成されてきたのか。—— 本書は、19世紀日本の各地で澎湃として起こった歴史的遺跡の発掘や考証、記念碑建立の活発な動きをつぶさに検討することによって、近代の史蹟空間を作り上げた歴史的想像力と文化構造の特質を明らかにした労作である。
目 次
序 論
第Ⅰ部 史蹟記念碑論
—— 古戦場と古城跡を中心に
第1章 桶狭間古戦場の記念碑
はじめに
1 史蹟への関心
2 戦死者の塚と供養
3 七石表と桶峡弔古碑
4 長久手古戦場と尾張徳川家
5 古戦場をめぐる伝承
6 もう一つの桶狭間古戦場跡
むすびに
第2章 賤ヶ岳古戦場と大名・百姓
はじめに
1 浄信寺雄山と『賤ヶ嶽記』
2 地誌の中の賤ヶ岳合戦
3 『賤ヶ嶽図会』の刊行
4 賤ヶ岳合戦記念日
5 中川家と下余呉村「中川連中」
6 賤ヶ嶽戦趾碑と毛受兄弟墓誌
むすびに
第3章 相模における史蹟記念碑
—— 玉縄首塚碑と筑井古城碑
はじめに
1 玉縄首塚碑の建立
2 記念碑と周辺村落
3 筑井古城碑と島崎家
4 我がすむ里
むすびに
第4章 郷土史の誕生と清洲城跡記念碑
はじめに
1 尾張の古城跡
2 19世紀中期の清洲城跡
3 清洲郷土史の誕生
4 清洲城墟碑の建立
5 地方名望家の歴史意識
むすびに
第Ⅱ部 復古の歴史像
第5章 祖先への回帰と顕彰の論理
はじめに
1 永続する家と顕彰碑
2 先祖の事蹟の顕彰
3 「東照宮御実紀」の思想
4 東照宮の遺蹟
むすびに
第6章 家と地域をみる眼
—— 渡辺崋山と『訪瓺録』の世界
はじめに
1 三宅家の系譜と崋山
2 武蔵国三ヶ尻村の調査
3 『訪瓺録』の特徴
4 主君の旧蹟地と伝承
5 「一国之大綱領」の確立
むすびに
第7章 城郭公園のなかの神社
はじめに
1 白山社から針綱神社へ
2 復古への動向
3 神社調査の展開
4 神社・地名の考証の特徴
5 神社と城郭
むすびに
第8章 美濃における古代伝説と遺蹟
—— 泳宮と喪山について
はじめに
1 泳宮旧蹟の探求
2 久々利千村家と泳宮
3 神蹟・喪山をめぐる考証
4 美濃古代史像の形成
むすびに
第Ⅲ部 史蹟と文化構造
第9章 風土記・図会の編纂と歴史意識
はじめに
1 風土記・図会研究の視点
2 地域社会と歴史の探究
3 「土人」・「里人」の歴史意識
4 宗教から歴史へ
むすびに
第10章 名所旧蹟と政治権力
—— 仁井田好古と『紀伊続風土記』をめぐって
はじめに
1 紀伊徳川家と史蹟
2 仁井田好古と記念碑の建立
3 「天地淑霊」の祀典
4 「修廃継絶」の政治
5 古典世界への想像力
むすびに
第11章 史蹟空間の形成
—— 長篠・設楽原古戦場跡を例として
はじめに
1 信玄原の火踊り
2 戦国武将の神格化
3 記念碑と記念祭典
4 史蹟空間のイデオロギー
5 長篠古戦場と地域住民
むすびに
あとがき
索 引