内 容
音高く呼ばい〈聖なるもの〉を現し出す声、あるいは〈ヲコなるワザ〉とともに哄笑、反語する笑い。——「遊者」から後白河院、花山院、文覚等にいたるまで、宗教と芸能、王権と物語のあわいに立ち「推参」する者の姿を通して、中世社会を動かす深層のダイナミズムに迫った労作。
目 次
序 章 中世の声
1 乱 声
2 亡国の声
3 声仏事をなす
4 諸行無常の声
5 あ 声
第1章 声の芸能史
1 〈聖なるもの〉の声を聴く
2 神と仏の声
3 冥の声
4 児の若音
5 白拍子の性と老い
6 乱世の声
7 やりこどんど
第2章 声わざ人の系譜
1 和漢文芸中の遊女と傀儡
2 遊女の推参と結縁
3 巫女の歌占に果たされるもの
第3章 推参考
1 遊者の習ひ
2 記録語としての「推参」
3 殿上淵酔の「推参」
4 「押シテ参タル」者の位相
5 中世の物語と芸能における「推参」
6 物語られる芸能としての「推参」
7 「推参」を生きる
第4章 中世寺社の宗教と芸能
南都篇
1 信如の夢
2 若宮巫女の芸能/夢/託宣
3 白拍子を聴く尼
4 律衆の夢と託宣
5 仏神のはざまを繋ぐもの
北嶺篇
1 とてもかくても候
2 アヅサヨヅラの起こり
3 ヒヒクメの遊び
第5章 霊地荘厳の声
1 二条の旅と仏神の声
2 辺土修行と足摺り
3 康頼熊野詣と足柄の歌
第6章 熊野考
1 熊野へ詣る王と聖たち
2 熊野縁起
3 淨不淨を嫌はず
4 熊野詣の霊験と王たち
5 熊野へ詣る「をぐり」たち
6 王、「をぐり」に遭う
第7章 笑いの芸能史
1 古面の笑い
2 王権神話の笑い
3 祭りの庭の笑い ——『新猿楽記』
4 物云いおかしき奴の笑い ——『今昔物語集』
5 世継翁の笑い ——『大鏡』
6 追放される笑い
第8章 ヲコ人の系譜
1 ヲコの “笑い” と権力
2 ヲコの物語としての「鼓判官」
3 世ノ中ノ狂イ者
4 鼓判官知康の肖像
5 検非違使と咒師猿楽
6 鼓判官の原像
終 章 文覚私註
1 文覚推参
2 笑う聖人
3 捨身と入定
4 後戸の音声
5 悪口と謀叛
6 原罪と放逐
7 聖は嘯いて去った
注
あとがき
初出一覧
図版一覧