内 容
発展著しいモンゴル帝国史研究の成果をふまえ、高麗王朝の元との宗属関係の実態をかつてない水準で描き出す。「元寇」の性格を規定した元-高麗関係の基本構造の解明により、またモンゴル帝国の周辺支配の最も緻密な実証例の提示によって、日本史、世界史にも新たな領域を開く画期的労作。
目 次
凡 例
序 章 高麗・元関係史研究の意義と課題
1 高麗・元関係史研究の意義と本書の視座
2 学説史とその問題点
3 本書の構成
第Ⅰ編 モンゴル支配層のなかの高麗王家
第1章 駙馬高麗国王の誕生
—— 元における高麗王の地位についての予備的考察
1 問題の所在
2 公主降嫁をめぐる高麗王家の率先帰服
3 高麗に対する公主降嫁の事情
4 駙馬から駙馬高麗国王へ
5 小 結 —— 高麗王位下の成立
第2章 高麗王位下とその権益
—— 大元ウルスの一分権勢力としての高麗王家
1 問題の所在
2 高麗王位下の権力組織
3 投下領としての高麗本国
4 高麗王の掃里
5 瀋陽路の投下領
6 小 結
第3章 高麗王家とモンゴル皇族の通婚関係に関する覚書
1 問題の所在
2 モンゴル帝室の通婚関係の諸形態
3 高麗王家とモンゴル皇族の通婚過程
4 通婚パターンの特徴
5 小 結
第4章 元朝ケシク制度と高麗王家
—— 高麗・元関係における禿魯花の意義に関連して
1 問題の所在
2 高麗王族のケシク参与に関連する史料用語
3 ケシクとなった高麗王族の事例
4 禿魯花の派遣とケシク参与との関係
5 高麗・元関係におけるケシク制度の意義
6 小 結
第Ⅱ編 相互連絡のインターフェースと高麗・元関係
第5章 高麗王とモンゴル官府・官人の往復文書
はじめに
Ⅰ 対元講和前の文書 —— 高麗王啓とモンゴル文直訳体文書
1 問題の所在
2 高麗側文書の差出名義と形式
3 高麗側文書の歴史的文脈
4 高麗史料からみたモンゴル官人の文書
5 小 結(1)
Ⅱ 牒と咨のあいだ —— 高麗王と元朝中書省の往復文書
1 問題の所在
2 牒式文書
3 咨式文書
4 小 結(2)—— 咨式外交文書成立試論
第6章 大元ウルスと高麗仏教
—— 韓国・松広寺所蔵の元代チベット文法旨をめぐって
1 問題の所在
2 松広寺法旨の内容について
3 松広寺法旨の発令年次と発給経緯について
4 松広寺法旨の発給をめぐる時代背景
5 小 結
第7章 高麗における元の站赤
—— ルートの比定を中心に
1 問題の所在
2 站赤敷設問題の発生
3 慈悲嶺以北の高麗西北部におけるルート
4 慈悲嶺以南の高麗中・南部におけるルート
5 西京~双城間のルート
6 済州島~鴨緑江口間の水站ルート
7 小 結 —— 高麗における站赤ルートの特色
補 論
第8章 『賓王録』にみる至元10年の遣元高麗使
1 問題の所在
2 李承休と『動安居士文集』ならびに『賓王録』
3 遣使の経緯と使節団の編成
4 往復の道程
5 燕京での迎接
6 宮廷その他における儀礼
7 高麗使が差し出す礼状
8 小 結
第Ⅲ編 帝国における王国の存立
第9章 事元期高麗における在来王朝体制の保全問題
1 問題の所在
2 「世祖旧制」論の検討
3 在来体制保全の形式的枠組み
4 「不改土風」の内実
5 小 結
終 章 元における高麗の機能的位置
—— “帝国東方辺境の守り手” として
1 問題の所在
2 甲戌・辛巳の役と高麗
3 高麗の “対日前線” 化
4 モンゴル皇族との通婚背景
5 交通・経済政策と王朝体制の保全
6 まとめ —— ならびに高麗史における甲戌・辛巳の役の意義
引用・参照文献
あとがき
初出一覧
索 引
書 評
『史学雑誌』(第123編第10号、2014年10月、評者:矢木毅氏)