内 容
近世日朝関係のルートは朝鮮通信使にとどまらない。その外交を最前線でささえた京都五山僧の役割と実像を、訳官使の往来、釜山倭館との関係、漂流民送還や詩文絵画・産品のやりとりなど、広い視野でとらえて日朝外政システムの全体像を解明、東アジア国際秩序の理解を大きく書き換える。
目 次
凡 例
序 章 禅僧と「外交」の近世
はじめに
1 以酊庵輪番制の成立前史
2 東アジアの国際秩序と近世日本
3 本書の問題関心と内容・構成
第Ⅰ部 朝鮮外交機構と以酊庵
第1章 以酊庵と輪番制
はじめに
1 以酊庵輪番制に関わる研究史
2 以酊庵の位置と生活
おわりに
第2章 以酊庵輪番制考
はじめに
1 日朝間の外交文書管掌
2 幕府の出先機関、監察機関としての以酊庵輪番制
おわりに
第3章 二つの輪番制
—— 対馬以酊庵と釜山倭館東向寺
はじめに
1 対馬藩における外交文書点検・作成能力
2 東向寺輪番制
3 以酊庵輪番制と清書役中・東向寺輪番僧
おわりに
第4章 18世紀の輪番制廃止論議
はじめに
1 以酊庵輪番制廃止の主張
2 議論の推移
おわりに
第Ⅱ部 訳官使と朝鮮通信使
第5章 訳官使考
はじめに
1 訳官使接待の五つの儀礼
2 幕府と訳官使
おわりに
第6章 訳官使の接待空間
はじめに
1 訳官使接待の空間構成
2 能興行
3 文化易地聘礼における接待空間
おわりに
第7章 朝鮮通信使と以酊庵輪番僧
はじめに
1 朝鮮通信使の日記に見える以酊庵僧
2 以酊庵僧の特徴的なすがた
おわりに
第8章 朝鮮通信使延聘交渉と梅荘顕常
はじめに
1 江戸聘礼延期論 (延聘論)
2 延聘を求める書翰
3 延聘交渉と以酊庵
おわりに
付論1 朝鮮「信使」と朝鮮「通信使」
第Ⅲ部 漂流と漂流記
第9章 東アジア海域の漂流民送還体制
はじめに
1 近世における朝鮮人漂流民の送還
2 近世から近代に至る漂流民送還制度
3 近世的慣行からの離脱
おわりに
第10章 江戸時代日本に残された漂流記
はじめに
1 漂流の時代と漂流記
2 近世日本人の朝鮮漂流記
3 異なる漂流史料の比較対照
おわりに
第11章 薩摩船の朝鮮漂流記
はじめに
1 薩摩武士と朝鮮官僚との交流
2 武士と民衆
おわりに —— 文化的な共通性の意識
第Ⅳ部 モノと言葉
第12章 江戸時代における日本人と朝鮮人の対話
はじめに
1 癸未使行録に見える訳官のすがた
2 倭学訳官の能力
おわりに
第13章 梅荘顕常と朝鮮
はじめに
1 明和通信使との交流
2 以酊庵輪番僧として
おわりに
第14章 18世紀対馬における日朝交流
—— 享保19年訳官使の事例
はじめに
1 対馬藩側から見た訳官使
2 金弘祖『海行記』から見た訳官使
3 訳官使に見る日朝交流のすがた
おわりに
第15章 日朝間の贈物・誂物
はじめに
1 朝鮮からの贈物・取寄物
2 朝鮮への贈物・持出物
おわりに
付論2 幕閣の吐露した朝鮮認識と以酊庵僧
終 章 日朝外交史上の江戸時代
はじめに
1 以酊庵僧の選抜と「大君」号
2 近世的な国際秩序
おわりに —— 以酊庵輪番制と対馬藩朝鮮方真文役
注
参考文献
あとがき
初出一覧
図版一覧
索 引
書 評
『ヒストリア』(第269号、2018年8月、評者:吉村雅美氏)
『日本史研究』(第670号、2018年6月、評者:田代和生氏)
『東洋史研究』(第76巻第4号、2018年3月、評者:石田徹氏)
『週刊読書人』(第3220号、2017年12月22日付、特集「2017年回顧総特集」、評者:福留真紀氏)