内 容
交隣とは、たんに日朝の善隣友好を示すものではない。朝貢一元体制の矛盾の露呈を防ぎ、各国の通交を成り立たせた朝鮮外交の意外な役割から東アジアの秩序体系を明らかにし、西洋の到来によるその解体過程も精細にとらえて、世界史的近代の日・朝・中・琉球の姿を映し出す。
執筆者
(執筆順)
岡本 隆司(序章・補論・第7章・終章)
石田 徹(第1章・補論)
中 純夫(第2章)
石川 亮太(第3章・第6章)
森 万佑子(第4章・第8章)
朴 漢珉(第5章)
目 次
凡 例
序 章 「交隣」とは何か …………………… 岡本隆司
第Ⅰ部 交隣の諸相
—— 近世のプリズム
第1章 交隣と隣交 …………………… 石田 徹
—— 近世対馬における日朝関係認識
はじめに
1 近世~近代移行期日朝関係史研究概観
2 「対馬宗家文書」における「隣交」
3 対馬藩における「日朝関係」認識
4 維新期対馬における「交隣」
おわりに
第2章 北伐と北学 …………………… 中 純夫
—— 近世朝鮮の対清認識
はじめに
1 宋時烈とその門下の中国認識
2 北学派の対清認識と北学思想
3 北学派の宋時烈評価と華夷観念
4 北伐と北学
おわりに
第3章 交隣と貿易 …………………… 石川亮太
—— 開港前後の海藻輸出
はじめに
1 フノリ・テングサとその利用
2 倭館終末期の対日貿易とフノリ・テングサ
3 釜山開港後の海藻貿易と収税問題の発生
4 警察所による海藻「公貿」とその結末
おわりに
補 論 交隣と信義 …………………… 石田徹・岡本隆司
—— 通信から欽差へ
はじめに
1 朝鮮側史料における「通信」
2 日本側史料から見た「通信」
3 修信使の派遣
4 欽差大臣へ
おわりに
第Ⅱ部 交隣の高潮
—— プリズムの拡大
第4章 交隣の論理と中華 …………………… 森 万佑子
—— 1874年「密咨」の衝撃
はじめに
1 密咨の到着とその内容
2 密咨への反応と朝鮮政府の対応
3 交隣と中華のはざま
おわりに
第5章 朝鮮の対日使節派遣 …………………… 朴 漢珉
—— 使節にみる交隣の変容
はじめに
1 修信使派遣時期の活動と特徴
2 欽差大臣の派遣と交渉
おわりに
第6章 交隣と条約 …………………… 石川亮太
——「自由貿易」と商業税をめぐる日朝交渉
はじめに
1 宮本・趙書簡の成立とその内容
2 海関設置以前の貿易体制と宮本・趙書簡
3 海関設置後の開港場商業と自由貿易
4 二重課税をめぐる争点の明確化と膠着
5 開港場客主制度をめぐる論議の帰結
おわりに
第Ⅲ部 交隣の運命
—— プリズムの葛藤
第7章 琉球の「兩屬」から朝鮮の「兩截」へ …………………… 岡本隆司
——「自為一國」をめぐる一考察
はじめに
1 「金山洋文日報」と「自為一國」
2 『三洲日記』と「自主」
3 「琉球処分」と「自為一國」
4 変容とその意味
おわりに
第8章 天津からみる朝鮮の「交隣」…………………… 森 万佑子
—— 事大における敵礼の模索
はじめに
1 『舊韓國政府外交文書綴』「第七冊」と「第八冊」の概要
2 事大と交隣の交錯
おわりに
終 章 事大と列強のはざまで …………………… 岡本隆司
——「大君主」の興亡
はじめに
1 「大君主」の登場と定着
2 朝鮮の条約締結と君主号
3 「大君主」の変容
4 「皇帝」即位
おわりに
註
あとがき
文献目録
索 引
書 評
『歴史の理論と教育』(第158・159合併号、2023年3月、評者:池内敏氏)