内 容
近世期、高度に成熟した表現を獲得した国絵図、鳥瞰図などの絵図の役割を、色彩・材料などのモノや、制作者や人々の想像力から新たに捉え、近代地図への発展史観が見落とした全体像を提示、海図など海洋の視点も導入して、近代移行期の社会空間をめぐる理解を書き換える、絵図研究の決定版。
目 次
序 章 近世社会と絵図作成
はじめに
1 基礎的考察
2 近世 —— 絵図の「開花の季節」
3 海陸の視座をもった近世・近代移行期論へ
4 本書の構成
第Ⅰ部 国絵図と日本図
—— 近世の「国土」把握
第1章 アジアのなかの政治地図
—— 国絵図と日本図
はじめに
1 徳川政権下の巨大地図
2 徳川型政治地図の成立
3 新しい海洋の登場と統一的国土表現の試み
おわりに —— 絵図の時代の終焉と「地形図」の登場
第2章 国絵図と近世社会
はじめに —— 歴史のなかの国絵図
1 「公儀」と空間把握 —— 元禄国絵図
2 空間把握の展開 —— 天保国絵図
おわりに
補 論 境界上の地名は誰のものか
第3章 国絵図研究の歩みを俯瞰する
—— 19世紀から21世紀へ
はじめに
1 研究前史
2 国絵図研究の本格化
3 国絵図に関する国際的な研究発信
おわりに
第Ⅱ部 新たな海洋把握と「日本」の創出
——「国土」の変容
第4章 新たな海洋把握と「日本」の創出
—— 開成所と幕末維新
はじめに
1 新たな海洋把握とその意味
2 「日本」の創出
3 日本図布告
おわりに
第5章 可視化された首都と政体
—— 近代的海図と船艦の19世紀
はじめに
1 近代的海図と船艦
2 日本沿海測量問題と海洋情報 —— 文久元年の異例の老中弁明書
3 可視化された首都と政体 —— 海図 Gulf of Yedo
4 船艦というアクター ——『戊辰己巳官軍諸艦記事略』から
5 船艦保有情報の統合と海洋知再編の試み
おわりに
第6章 近代国家形成過程再考
—— 海洋から見たジオ・ボディ
はじめに
1 状 況
2 ジオ・ボディの創造
おわりに —— 海陸の視点をもったジオ・ボディ概念へ
第Ⅲ部 表現する人々
—— 社会の側から諸世界を構想する
第7章 歌舞伎作者並木正三
—— 交差する複数「世界」と「日本」
はじめに
1 「三千世界商往来」の時空
2 「日本」とその外
3 作者としての並木正三
4 近世身分秩序のなかの役者と作者
おわりに
第8章 一覧図絵師五雲亭貞秀
—— パノラマ式広域鳥瞰錦絵が描く激動の政治社会
はじめに
1 五雲亭貞秀研究史と本章の視点
2 貞秀の出版図の2つのジャンル —— 地図と錦絵
3 文久行列図の位置と特質
4 変動期の社会と貞秀の出版図
おわりに
第9章 書かれたものに対する統制
—— 出版検閲体制のなかの絵図と錦絵
はじめに
1 統制の流れ
2 天保改革と検閲分掌体制
3 絵図に対する検閲
おわりに
第Ⅳ部 モノと色彩
—— 空間表現を支えるもの
第10章 史料学の試み
——「モノとしての史料」を問い直す
はじめに —— 歴史研究という行為
1 「日本古文書学」の成立と史料学の展開
2 「古文書・地理の解放」「物語からの解放」としての近代
3 「モノとしての史料」を問い直す
おわりに —— 歴史研究という表現
第11章 構造体としての絵図
はじめに
1 モノとしての絵図
2 内容表現の思想
おわりに —— 構造と動態のなかの絵図・地図
補 論 復元研究が明らかにしたこと
第12章 色彩の時代
はじめに
1 色をかたちづくるもの
2 自然は何色か —— 彩色材料から見た絵図
3 2つの緑色 —— 空間分割の技法
4 輝きと普遍 —— 秩序表現としての彩色
おわりに
終 章 国土・海洋認識と近世社会
はじめに
1 近世的「国土」とその変容
2 世界や社会を描く
おわりに
注
あとがき
初出一覧
図表一覧
事項索引
人名索引
受 賞
書 評
UTokyo BiblioPlaza(2024年5月31日公開、自著紹介)
『日本歴史』(2023年9月号、第904号、評者:上杉和央氏)
『地図情報』(第43巻第1号、2023年5月、評者:川村博忠氏)
『人文地理』(第74巻第4号、2022年、評者:平井松午氏)