内 容
徳川後期、対東アジア・西洋外交の前線にたった学問所儒者、古賀家三代の知的・政治的所産を徹底した史料調査により解明、学問所儒学の停滞したイメージを覆すとともに、日本近代外交黎明期の姿を鮮明に描き出し、江戸後期思想史・政治史・外交史の大幅な書き換えを迫る画期的成果。
目 次
はじめに
序 章 忘却された儒家の名門
—— 古賀家三代
1 近代日本における古賀家三代
2 幕府学問所儒学研究をめぐる課題
3 古賀家の知的世界 —— 史料としての「萬餘巻樓」蔵書群
第Ⅰ部 学政創制と外交参与
—— 古賀精里
第1章 佐賀藩政改革
—— 課題としての造士・選士
1 古賀精里の思想遍歴 —— 遊学・「正学」転向の背景
2 天明の藩政改革
—— 藩政参与・「時務管見」「選士法議」・藩校弘道館創設
第2章 徳川幕府の学制改革
—— 昌平坂学問所成立をめぐって
1 寛政の学制改革 —— 柴野栗山「上書」・直参吟味・「正學」
2 学問所儒学の射程
—— 儒者・学問吟味・官版・策問・論説・書誌編纂・門人群
第3章 幕府儒者の外交参与
—— 東北アジア域圏礼的秩序の枠組み
1 徳川後期の外交問題
2 対ロシア —— 自覚化された「祖法」
3 対朝鮮 —— 對馬聘礼をめぐって
第Ⅱ部 視圏拡大と変通論
—— 古賀侗庵
第4章 古賀侗庵著作の周辺
第5章 知的世界の拡大
——「博覧強記」の学問
1 経書解釈 —— 清朝学術受容の一側面
2 世界認識 —— 東北アジア域圏から地球世界へ
第6章 変通論
——「物窮まれば則ち変ず」
1 海防策とそれを支える「窮理」観 —— 学問所儒学における位置
2 オランダ国書返翰をめぐって ——「変通」と「交易」
第Ⅲ部 海防争議のなかの変通論
—— 古賀謹堂とその時代
第7章 阿部政権の海防掛体制と学問所
—— 学問所御用筒井鑾溪と弘化・嘉永年間の海防論
1 述齋隠居後の林家・学問所
2 筒井鑾溪の海防論 —— 弘化・嘉永・安政期の主張変遷
第8章 学問所出身の幕臣・陪臣たちの経世論
—— 嘉永六年の諮問と答申
1 アメリカ国書の翻訳と内容 ——「開国」勧告の論理
2 「開国」勧告への反応 —— 学問所関係者を中心として
第9章 情報資源と政治構想
—— 古賀謹堂の知的世界
1 古賀謹堂の情報資源 —— 弘化・嘉永・安政期の読書歴
2 萬巻の読書と一漂民の経験 —— 海外見聞記「蕃談」編纂
3 洋学建白と洋学所初代頭取
第10章 党派対立と政治構想
—— 海防掛と古賀謹堂
1 勘定系と目付系 ——「内事外政両輪」
2 露西亜応接掛の経験と政治構想
3 英吉利応接掛古賀謹堂と目付系海防掛 ——「書生」的「正論」の展開
終 章 昌平坂学問所儒学の中での古賀家三代の思想的軌跡
註
巻末資料
あとがき
図表一覧
索 引