内 容
不実申告・過大請求から保険金殺人まで、急増するモラル・リスクをいかに抑止すべきか。日本での2008年保険法制定による変化を踏まえ、詐欺請求時に給付免責が可能とする法理と、その場合の判断基準について、同様の問題を抱えた英米豪での判例・学説も精査し、初めて明確に提示。
目 次
序 章 保険金詐欺請求が抱える法的問題
第1節 本書の目的と構成
第1款 検討課題① —— 詐欺請求の法的効果
第2款 検討課題② —— 詐欺請求の判断基準
第2節 本書と先行研究との関係
第1款 英国法の先行研究
第2款 米国法の先行研究
第3款 オーストラリア法の先行研究
第4款 小 括
第3節 本書の構成
第I編 日本法
第I編はじめに
第1章 特別解約権・重大事由解除権における詐欺請求に関する規律
第1節 理論上の特別解約権の導入と意義
第1款 序 論
第2款 特別解約権導入後の裁判例の変貌
第2節 重大事由解除における詐欺請求
第1款 重大事由解除権の導入と意義
第2款 詐欺請求による重大事由解除に関する裁判例
第3款 小 括
第3節 重大事由による解除権をめぐる学説
第1款 重大事由解除の法的効果
第2款 詐欺請求の判断基準
第4節 問題点の整理
第2章 損害の不実申告・詐欺請求による保険者の給付免責に関する規律
第1節 序 論
第2節 保険者の給付免責をめぐる諸問題
第1款 損害の不実申告・詐欺請求の法的効果
第2款 詐欺請求の判断基準
第3款 保険法の下での重大事由解除権の規律と不実申告免責条項への影響
第3節 問題点の整理
第I編おわりに
第Ⅱ編 比較法
第Ⅱ編はじめに
第3章 英国法
第1節 序 論
第1款 英国法を研究の対象とする理由と目的
第2款 詐欺請求問題の現状と対処
第3款 本章の構成
第2節 詐欺請求への対応の基本的構造
第1款 総 論
第2款 詐欺請求への対応の基本的構造
第3款 小 括
第3節 詐欺請求の判断基準
第1款 総 論
第2款 過大請求の判断基準
第3款 「詐欺的手段」の利用に係る規律についての判断基準
第4款 小 括
第4節 2015年保険法制定前の詐欺請求の法的効果
第1款 総 論
第2款 詐欺請求の法的効果のコンセプト
第3款 小 括
第5節 2015年保険法とその制定過程
第1款 総 論
第2款 現行法の文言 —— 詐欺請求の規律に関する規定(第12条)
第3款 2015年保険法の制定に至る経緯と概要
第4款 2014年改正法案(Draft Bill)の概要
第5款 小 括
第6節 2015年保険法の下での詐欺請求の法的効果
第1款 総 論
第2款 12条の射程・限界 —— 学説を中心に
第3款 小 括
第7節 金融オンブズマンによる詐欺請求の判断
第1款 総 論
第2款 金融オンブズマンによる詐欺請求に関する事例の苦情処理
第3款 金融オンブズマンのアプローチに対する分析と評価
第4款 小 括
第8節 英国法の総括
第4章 米国法
第1節 序 論
第1款 米国法を研究の対象とする理由と目的
第2款 詐欺請求問題の現状と対処
第3款 本章の構成
第2節 詐欺請求対応に関する私法的規律
第1款 総 論
第2款 保険金請求過程上の通知・損害証明義務に関する規律
第3款 虚偽宣誓条項による給付免責の基本的なルール
第4款 詐欺請求と協力義務
第5款 小 括
第3節 詐欺請求におけるモデル法と州の詐欺取締法規制
第1款 総 論
第2款 モデル法による規制
第3款 州の取締法による規制
第4款 小 括
第4節 米国法の総括
第5章 オーストラリア法
第1節 序 論
第1款 オーストラリア法を研究の対象とする理由と目的
第2款 詐欺請求問題の現状と対処
第3款 本章の構成
第2節 ICA 制定前の詐欺請求に対する私法的規律
第1款 詐欺請求に関する約款規律の変遷
第2款 最大善意の義務と詐欺請求
第3節 ICA の下での詐欺請求の判断基準
第1款 ICA の規定
第2款 ICA の立法趣旨、ALRC 報告書の内容と現在の解釈
第4節 ICA の下での判例とその意義
第1款 総 論
第2款 過大請求の判断基準 —— 些細なまたは重要でない部分
第3款 「詐欺的手段」の利用に係る規律
第4款 小 括
第5節 オーストラリア法の総括
第Ⅱ編おわりに
終 章 詐欺請求による失権に係る法的規律
第1節 詐欺請求の法的効果
第1款 比較法的考察のまとめ
第2款 詐欺請求による失権法理の理論的基礎
第2節 詐欺請求の判断基準
第1款 比較法的考察のまとめ
第2款 詐欺請求による失権の具体的要件の構築
第3節 今後の展望
文献一覧
判例一覧
あとがき
索 引
書 評
「保険毎日新聞」(2022年10月5日付、評者:松嶋隆弘氏)