内 容
西洋史の大きな物語 —— 古典古代の崩壊にともなう「野蛮と宗教」の時代から、洗練された習俗・商業・主権国家に基づく「ヨーロッパ」へ —— はいかにして形成されたのか。聖史を脱して博学と哲学を統合する多様な「啓蒙の語り」を読み解き、ギボンの知的文脈と独自性に迫るライフワーク。好評の第Ⅰ巻に続く、歴史叙述をめぐる思想史。
著者紹介
J.G.A. ポーコック
(John G.A. Pocock)
1924年ロンドン生まれ、ニュージーランドのクライストチャーチで育つ。ケンブリッジ大学にて博士号取得。現在、ジョンズ・ホプキンズ大学名誉教授。思想史研究における世界的第一人者。邦訳に『マキァヴェリアン・モーメント』(名古屋大学出版会、2008年)、『徳・商業・歴史』(みすず書房、1993年)、『島々の発見』(名古屋大学出版会、2013年)がある。本書『野蛮と宗教』により、アメリカ哲学協会のジャック・バーザン賞を受賞。
(所属などは本邦訳刊行時のものです。)
目 次
凡 例
謝 辞
参照、引用、翻訳について
序 文
序 説 初期近代の歴史叙述の多様性
第Ⅰ部 「啓蒙の語り」の構築
セクション1 ジャンノーネ —— 地中海中央部の法律家・自由思想家
第1章 文明史と教会史
第2章 教皇と皇帝
—— イサウリア朝からホーエンシュタウフェン朝へ
第3章 アンジュー家、スペイン人、フランス教会
—— 啓蒙の間際で
第4章 ギボンとジャンノーネ
—— 語り、哲学、博学
セクション2 ヴォルテール —— 啓蒙の世界像における新古典主義者・哲学者
第5章 ヨーロッパの地平で
—— 北方の国王たち
第6章 啓蒙の道具としての宮廷の君主政
——『ルイ14世の世紀』
第7章 歴史の脱キリスト教化とアジア
——『ルイ14世の世紀』と『習俗論』
第8章 ヨーロッパのキリスト教千年期
——『習俗論』
第9章 市民的統治の回復、狂信の再生、『世紀』への復帰
第10章 ヴォルテール
—— 怒れる先駆者
第Ⅱ部 歴史的時代と歴史的国民
セクション3 デイヴィッド・ヒュームとイングランドの哲学的歴史
第11章 ハノーヴァー朝の諸王国における歴史の問題
第12章 デイヴィッド・ヒューム
—— 同時代史としての『論集』
第13章 『大ブリテン史』
—— ヒュームの近代史
第14章 テューダー朝のイングランド
—— 君主政、ヨーロッパ、熱狂
第15章 ヒュームの『イングランド史』
—— 啓蒙の物語を振り返る
セクション4 ウィリアム・ロバートスンとヨーロッパ史
第16章 歴史叙述の諸問題
—— スコットランドの視座
第17章 スコットランドと社会の進歩
第18章 カール5世の治世とヨーロッパの諸国家の出現
第19章 ロバートスン
—— 書かれた歴史と書かれなかった歴史
第Ⅲ部 市民社会の進歩
セクション5 アダム・スミス —— 法学から歴史へ
第20章 道徳哲学と社会の諸段階
第21章 スミスのグラスゴー講義
—— 語りと哲学的歴史
セクション6 アダム・ファーガスン —— マキァヴェリアンの穏健派
第22章 ファーガスンの『市民社会史論』
—— 世界史の揺籃としてのシベリア
第23章 『文学回想』と『ヤペテの名残』
第24章 スコットランドの語り
—— 理論的歴史と市民的歴史
第Ⅳ部 『衰亡史』の企て
第25章 啓蒙の語りと1776年の計画
第26章 「ギボンの暗黒時代」
—— 1765~72年の著作
第27章 語りの構築
——『自伝』の証言
注
訳者あとがき
参照文献
索 引
書 評
『経済学史研究』(65巻2号、2024年1月、評者:渡辺恵一氏)
『図書新聞』(2022年12月24日号、第3572号、特集「22年下半期読書アンケート」、評者:中金聡氏)
『野蛮と宗教』
関連書
『マキァヴェリアン・モーメント』 J・G・A・ポーコック 著/田中秀夫・奥田 敬・森岡邦泰 訳
『島々の発見』 J.G.A. ポーコック 著/犬塚 元 監訳
『ヒューム 道徳・政治・文学論集[完訳版]』 デイヴィッド・ヒューム 著/田中敏弘 訳
『イギリス思想家書簡集 アダム・スミス』 篠原 久・只腰親和・野原慎司 訳
『アダム・スミス 法学講義 1762~1763』 アダム・スミスの会 監修/水田 洋・篠原 久・只腰親和・前田俊文 訳