内 容
三国志の英雄はなぜ中国を代表する神となったのか。民間信仰の広がりと近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出す。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。
目 次
凡 例
参考地図
序 章 領域統合と民間信仰
1 現代における国家と関羽信仰
2 中国近世の民間信仰に関する研究
3 清朝の統治構造、王権と宗教に関する研究
4 本書の目的と構成
第1章 唐朝から明朝における関羽の神格化
1 『三国志』『三国志演義』に見える関羽の義行と霊異伝説
2 唐朝から元朝までの関羽の霊異伝説
3 明朝における関羽の霊異伝説
4 関羽の神格化と霊異伝説
第2章 清朝と関聖帝君の「顕聖」
—— 霊異伝説の創出
1 清朝における関羽の祭祀・封号と軍隊
2 関聖帝君の霊異伝説の分析
3 関聖帝君の顕聖と「われわれ」意識の共有
第3章 関帝廟という装置
1 現代中国の関帝廟
2 記憶・伝承装置としての関帝廟
3 顕聖する空間としての関帝廟
第4章 「白蓮」の記憶
—— 明清時代江南デルタの謡言と恐怖
1 恐怖の謡言をめぐる研究視角
2 光緒二年の謡言(1)—— 県志中に見える紙人、魘魅、割辮
3 光緒二年の謡言(2)—— 郷鎮志中の「国を挙げて狂うが若し」
4 たぐりよせられる過去の記憶
5 「白蓮」紙人の恐怖と関聖帝君の顕聖
第5章 清朝のユーラシア世界統合と関聖帝君
—— 軍事行動における霊異伝説の創出
1 乾隆帝と関聖帝君の顕聖
2 新疆・チベット・台湾における関聖帝君の顕聖
3 乾隆帝と関聖帝君・転輪聖王・ゲセル
第6章 清朝の版図・王権と関羽信仰
—— 乾隆帝の十全武功と関聖帝君の顕聖
1 十全武功の記憶化と版図の可視化
2 清朝の版図と関聖帝君
3 清朝皇帝の権威と関聖帝君
終 章 国家と宗教
1 中国近世における国家と宗教 —— 清朝の王権と関羽信仰
2 近世東アジアにおける王権と宗教
3 近代国家と宗教
註
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
英文摘要
中文摘要
書 評
『歴史学研究』(2023年6月号、第1036号、評者:石野一晴氏)
『東洋史研究』(第80巻第3号、2021年12月、評者:小武海櫻子氏)
『中国研究月報』(2020年9月号、第74巻第9号、評者:殷晴氏)
『週刊読書人』(2019年12月6日号、第3318号、評者:城山陽宣氏)