内 容
人口爆発、商品経済化、人とモノの移動の激化に伴い急増した犯罪は、清代中国をどう変えていったのか。犯罪、警察、監獄の実態を初めて包括的に描きだし、中国近世社会史の大きな欠落を埋めるとともに、その独自の治安システムの展開を捉えて世界史のなかに位置づけた瞠目の成果。
目 次
序 章 中国近世史における犯罪と治安
1 なぜ犯罪や警察・監獄なのか
2 方法としての犯罪社会学的研究
3 方法としての治安維持装置研究
4 本書の課題 —— 地域・構成・史料
第Ⅰ部 犯罪と警察の近世
第1章 近世東アジア人口の増加・移動と「近世」的犯罪
1 本章における問題設定
2 平和の到来、人口増加、犯罪発生率の増大
3 商品経済の進展と市鎮・農村の「傷風敗俗」
4 「近世」的犯罪・悪習と地方志編纂者、近世国家
5 小 結
第2章 緑営の「汛」の設置・管轄区域と市鎮の〝領域〟
1 本章における問題設定
2 緑営の組織編成と空間的配置
3 汛の管轄区域の分析(1)—— 松江府の場合
4 汛の管轄区域の分析(2)—— 蘇州府呉江県盛沢鎮の場合
5 汛の管轄区域と市鎮の〝領域〟
6 小 結
第3章 農村空間における犯罪動向と市鎮住民
1 本章における問題設定
2 江南デルタの中間市場社会と社会的指導層
3 江南デルタ市鎮をめぐる犯罪動向
4 若干の強盗事件に関する分析
5 江南デルタにおける汛防制度の展開
6 汛防制度と江南デルタ市鎮住民
7 小 結
第4章 佐弐・雑職の市鎮への移駐と管轄区域
1 本章における問題設定
2 佐雑の定員数・分防開始期・駐箚地
3 佐雑の管轄区域と州県の領域
4 佐雑の分防と江南デルタ市鎮住民
5 佐雑の職務と『佐雑須知』
6 小 結
第5章 「犯罪取締りの歴史」と開発・発展の全体史
1 本章における問題設定
2 反清武装集団の活動とその鎮圧 —— 17世紀半ば~18世紀初
3 太湖流域漁民と幹線水路の警備 —— 18世紀初~半ば
4 蘇州踹布業労働者とその監視体制の確立 —— 18世紀前半
5 江南デルタ開発・発展の全体史と犯罪取締りの歴史
6 小 結
第Ⅱ部 監獄の近世
第6章 近世旧監獄社会と牢頭
1 本章における問題設定
2 監獄への拘禁とその管理
3 牢頭・鎖頭に関する4つの事例報告
4 牢頭を中心とする監獄社会と国家権力
5 小 結
第7章 訴訟と歇家
1 本章における問題設定
2 官箴書・地方志に見える歇家 —— 訟師・胥吏・衙役との関わり
3 歇家による身元保証と管押 —— 都市に出向いてきた者をいかに捉えるか
4 歇家と管押 —— 収監と保釈のあいだ
5 小 結
第8章 「自新所」の誕生
1 本章における問題設定
2 自新所とは何か
3 窃盗事件への注視と潜在的犯罪者の疑似保甲
4 犯罪者に対する地域社会の排除姿勢と自新所への拘禁
5 小 結
第9章 清末湖州府南潯鎮社会と洗心遷善局
1 本章における問題設定
2 湖州府南潯鎮の洗心遷善局
3 蘇州府呉県の洗心局
4 洗心遷善局設立の意義と地域社会
5 小 結
第10章 自新所・遷善所・改過所から習藝所へ
1 本章における問題設定
2 自新所の普及と展開
3 湖北闔省遷善所
4 上海県改過所(改過局)
5 小 結
終 章 東アジア史・世界史のなかの中国「近世」
1 中国近世の犯罪と警察・監獄
2 犯罪と治安から「近世」「近世化」を考える
註
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
英文摘要
中文摘要
書 評
『東洋史研究』(第75巻第4号、2017年3月、評者:高遠拓兒氏)
『週刊読書人』(第3120号、2015年12月18日付、評者:関智英氏)