内 容
「中華」的価値とは一線を画す内陸アジアから、東アジアにまたがる他民族統合を実現した清帝国の論理・諸政策と統治構造を、チベット仏教文化と儒教文化の緊張関係を軸に捉え、最終的には西欧近代的価値の流入やナショナリズムの勃興とともに内部崩壊していく過程を実証的描いた力作。
目 次
凡 例
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序 章 チベット仏教と清帝国
—— 歴史的連続と断絶から
1 盛世の栄華、清末の奈落
2 本書の視角と構成 —— 前近代帝国をどう捉えるか
第1章 「中華世界」と清帝国
—— 批判的再検討
1 ナショナリズム・国家統合と歴史観
2 反「ヨーロッパ一元」と「“周辺” の自他意識」としての「中華世界」
3 「中華世界」論の輸入と「中国」のイメージ
4 「孤独な帝国」
5 「転輪聖王」としての清皇帝
6 「複合体」としての清帝国をどう認識するか
第2章 清帝国の統合における反華夷思想と文化政策
1 「究極の専制君主」雍正帝
2 質朴と華美、武勇と文弱 —— 何が雍正帝の心を慰めるのか
3 分かつことと一体であること ——「中外一体」と民族観・宗教観
4 仏教・イスラーム・キリスト教と儒学者
5 「教」と「淫」の境界
6 チベット仏教僧と「定制」
7 「苗政」への視点
第3章 堯舜に並び超える「皇清の大一統」
—— その光と陰
1 「道」の支配への賛美
2 多重構造帝国としての「皇清の大一統」
3 内在された危機(1)—— 満洲人のアイデンティティと実力の危機
4 内在された危機(2)—— 同盟者・モンゴル騎馬兵力の衰退
5 内在された危機(3)—— 公正な権力行使の欠如
第4章 「自治」論の時代
—— 19世紀前半のチベット論
1 統治の弛緩と版図統合認識強化のあいだ
—— モンゴル・新疆統治との比較から
2 懐疑と優遇
3 チベット仏教・チベット社会と「自治」
4 屯田論と「自治」
5 前近代清帝国における領域国家像の形成
第5章 英国認識とチベット認識のあいだ
1 英国のチベット経略
2 清英関係における清帝国の立場をめぐって ——「一方的侵略と妥協」か
3 ロシアと日本の脅威
4 英国をどうみるか
5 チベットと「国是」
結 論
注
あとがき
引用文献一覧
索 引