内 容
宗教が異なれば社会のかたちも異なる、という図式は、本当に有効なのか。生活の場を介して、カーストを含む多様な集団が相互に交錯する過程を、宗教の別をこえてトータルに把握。物乞いや聖者など宗教横断的な主体も視野に、分裂した南アジア像が覆い隠してきたものをすくいだす。
目 次
凡 例
地 図
序 章 生きられる社会空間からの再考
1 本書の問い
2 カースト概念の再考
3 宗教によって分断された地域像の再検討
4 本書の研究課題と構成
第Ⅰ部 歴史・社会・空間
第1章 宗教とカーストをめぐる歴史的経緯
1 ベンガルにおけるアーリヤ化とイスラーム化
2 英領時代における分割統治政策と宗教間対立
3 印パ分離独立とバングラデシュ独立戦争
第2章 宗教とカーストをめぐる社会-空間の再検討
1 先行研究の動向
2 従来のバングラデシュ村落研究の問題点
3 本書が検討する在地の概念と慣行
第3章 調査地の概要と研究方法
1 調査地の概要
2 研究・記述方法
3 調査地における宗教的活動および互助と富の分配
第Ⅱ部 宗教・カースト・コミュニティ
第4章 ムスリムのコミュニティの拡大
—— G村のヒンドゥーとムスリム
1 ヒンドゥー・ムスリムのすみわけとその変化 ——〈第1~2期〉
2 ムスリムのリーダーシップ ——〈第3期〉
小 括
第5章 序列から差異へ
—— B村のヒンドゥーのカーストとコミュニティ
1 カヨストによる支配とムスリムの台頭 ——〈第1~2期〉
2 マイノリティとしてのヒンドゥー ——〈第3期〉
小 括
第6章 差異と序列の持続と変化
—— B村の被差別ムスリムの宗教とカースト
1 楽師の職能とヒンドゥーとの類似性 ——〈第1期〉
2 カヨストとの関係と社会・経済水準の変化 ——〈第2期〉
3 シャナイダルの宗教と職能をめぐる葛藤 ——〈第3期〉
小 括
第Ⅲ部 一体性・関係性・生きられる宗教
第7章 一体性を生み出す時間と空間
—— 青年組合と民間信仰
1 G村の青年組合とグラムのショマージ
2 B村における青年組合と民間信仰の儀礼
小 括
第8章 空間と関係性の弁証法
—— 互助と富の分配
1 G村のショマージ内に特化した援助
2 B村における限定された組織的取り組み
小 括
終 章 生きられる社会空間における宗教とカースト
1 ジャーティ思考-実践の持続と変化
2 社会空間の変動と動態
3 還元主義の心的空間をこえて
参考文献
用語集
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『2023年人文地理学会大会 研究発表要旨』(2023年11月 評者:原口剛氏、宮内洋平氏)
『地理学評論』(第96巻第4号、2023年7月、評者:浅田晴久氏)
関連書
『イスラーム世界研究マニュアル』 小杉 泰・林佳世子・東長 靖 編