内 容
19世紀末から1930年代までのイギリス帝国史を、ヘゲモニー国家から「帝国的な構造的権力」への変容として捉える視角から、インド軍の海外派兵問題と、東アジアの工業化に対するイギリスの認識に着目し、安全保障構造から経済構造にわたる新たな国際関係史の構築を試みた力作。
目 次
序 章 イギリス帝国と国際秩序
——ヘゲモニー国家から帝国的な構造的権力へ
1 本書の課題
2 構造的権力と非公式帝国論
3 パクス・ブリタニカ最盛期のヘゲモニー国家と国際秩序
4 1930年代の構造的権力と国際秩序
5 本書の構成
第Ⅰ部 イギリス帝国とインド軍
第1章 19世紀末のインド軍海外派兵問題
—— マルタ、アフガニスタン、エジプト
1 イギリス帝国の軍事的資産としてのインド軍
2 インド軍のマルタ島派兵をめぐる論争
3 第二次アフガン戦争とインド軍
4 「ミドロジアン・キャンペーン」とイギリス帝国外交
5 インド軍のエジプト派兵をめぐる論争
6 イギリス帝国の論理と英領インド
第2章 世紀転換期のイギリス帝国とインド軍
—— 南アフリカ戦争と義和団事件
1 19-20世紀転換期の国際秩序とインド軍
2 ウェルビー委員会報告とインド軍
3 「少数派報告」とナオロジのイギリス帝国観
4 インド軍と南アフリカ戦争
5 義和団事件とインド軍
6 第一次世界大戦とインド軍
7 ヘゲモニー国家イギリスとインド軍
第3章 インド軍の上海派兵問題
—— 1927年
1 インド軍の海外派兵問題とアジア国際秩序
2 上海防衛軍の派兵とインド軍
3 イギリス経済利害と上海
4 インドナショナリズムのインド軍派兵批判
5 上海派兵の波紋 —— 経済利害、インド軍、安全保障
第4章 イギリス帝国の変容とインドの軍事力
1 帝国主義経費論争とインド
2 1920年代のインド軍とインド財政
3 ガラン裁定委員会とインドの軍事力問題
4 インド人委員の少数派報告とその修正
5 インドの軍事・財政問題とイギリス帝国
第Ⅱ部 東アジアの工業化とイギリス帝国
第5章 世紀転換期の日本の工業化に対するイギリスの認識
1 イギリス領事報告と日本の工業化
2 イギリス帝国と東アジア
3 世紀転換期の日本の工業化とイギリス領事報告
4 中国市場をめぐる日英関係
5 経済利害の相互補完性と工業化
第6章 戦間期日本の経済発展に対するイギリスの認識
1 戦間期日本の経済発展とイギリス帝国
2 ジョージ・サンソムとイギリスの領事・通商報告
3 サンソムの日本経済認識
4 1930年のイギリス極東経済使節団と日本
5 戦間期の世界経済システムと日本
第7章 戦間期中国の工業化に対するイギリスの認識
1 戦間期中国の工業化とイギリス
2 1920年代の中国に対する認識 —— 綿布輸出の競争激化と中国の工業化
3 1930年のイギリス極東経済使節団と中国
4 1930年代の中国工業化に対する認識 —— 資本財輸出
5 中国市場をめぐる日英協調の模索
6 東アジアにおける経済的相互補完関係
第8章 東アジアの工業化と英領インド
——「アジア間貿易」、インドの工業化をめぐるイギリスの認識
1 英領インドの工業化とアジア間貿易
2 世紀転換期のインドの「工業化」と東アジア
3 英領インドとオタワ体制
4 1930年代の英領インドの工業化と東アジア
5 アジアの工業化とイギリス経済利害
第9章 1930年代におけるイギリスのプレゼンスの変質
—— 1935年の中国幣制改革をめぐって
1 中国の幣制改革とイギリスのプレゼンス
2 リース=ロス使節団派遣の政策的意図
3 中国幣制改革に対するイギリスの関与
4 リース=ロス使節団覚え書きと諸提言
5 イギリスのプレゼンスの変化
終 章
1 イギリス帝国とインド軍
2 東アジアの工業化とイギリス帝国
3 イギリス帝国とアジア国際秩序
4 第二次世界大戦とインド軍
5 スターリング残高の累増と脱植民地化
6 戦後世界への展望
あとがき
注
索 引
英文目次
書 評
【毎日新聞書評】
受 賞
著者の既刊書
関連書
『戦争国家イギリス』 デービッド・エジャトン 著/坂出 健 監訳/松浦俊輔ほか訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅰ』 P.J.ケイン 他著/竹内幸雄・秋田 茂 訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅱ』 P.J.ケイン 他著/木畑洋一・旦 祐介 訳