内 容
戦時下、人々は映画に何を見たのか? 全体主義統制下の映画産業と創造性のあり方を凝視するとともに、「文化」映画、「ヒューマニズム」戦争映画、精神主義映画等、戦争プロパガンダ映画の発展を通して「大日本帝国」の戦争と社会を鮮やかに描き出した労作。
目 次
まえがき
プロローグ 「自分の寝顔を見た」日本人
第1章 束の間の平和から「非常時日本」へ
1 束の間の平和
2 満州事変
3 「非常時日本」
第2章 「歪んだ鏡
—— 革新官僚と映画法
1 映画法の前兆
2 革新官僚
3 批評家と思想統制
4 映画法
5 懇談会システムの実践
6 革新官僚の信念
第3章 一世を風靡した「文化映画」
1 支那事変の勃発とニュース映画
2 支那事変初年の長編記録映画
3 亀井文夫事件
4 さらに物議をかもす東宝軍事ドキュメンタリー映画
5 委託映画の台頭と衰退
6 映画法に触発された文化映画への期待
7 文化映画の製作者
8 「純粋」科学と「曖昧」な映像
9 宣伝の問題
10 そして、ついに「現実」の問題
第4章 支那事変と映画業界
1 エゴの衝突
2 二人の監督の運命 —— 山中貞雄と伊丹万作
3 現代劇の輝かしき時代
4 詭弁と機械仕掛けの神
5 支那事変における映画人たち
第5章 「ヒューマニズム」戦争映画
1 一心同体 ——『五人の斥候兵』
2 戦争映画における「ヒューマニズム」
3 『土と兵隊』と『西住戦車長伝』
第6章 「理屈の時期は終わった!」
1 精神主義映画の宣言 —— 沢村勉
2 熊谷久虎 ——『阿部一族』
3 沢村と熊谷 ——『上海陸戦隊』
4 『指導物語』
5 『八十八年の太陽』と『潜水艦一号』
6 精神主義的な女性と精力的な女性
7 上に大空、下には死
第7章 チャイナ・ドリーム
1 広漠さへの不安
2 「王道楽土」への招待
3 李香蘭と満州映画協会
4 「支那人を描け!」
第8章 新たなる戦争の前夜
1 1940年 ——「贅沢は敵だ!」
2 引き網、さらに短く
3 1941年 ——「ABCD包囲」の中で
4 『君と僕』の異例なケース
5 「民間に廻す生フィルムは1フィートもない!」
第9章 統制の内在化
1 だれの青春に「悔いなし」なのか?
2 岩崎昶、「豚箱」に入る
3 「槍ぶすまの真中で踊らされて」
第10章 「打倒英米」
—— 映画戦始まる
1 「暗い日々」に対するアメリカの反応
2 日本映画人と「ハッキリと表示された戦争目標」
3 連戦連勝期の映画 —— 1942年
4 新しい外部世界をイメージする
5 「支那事変より楽になった!」
6 そして、すべて「国策映画」となった
第11章 「魂の進歩」
—— 新たな精神主義映画
1 『ハワイ・マレー沖海戦』—— 戦争スペクタクル映画製作の困難
2 映画における精神主義の復活
3 軍国の母たち
4 純戦闘映画における格下げされた英雄
5 靖国神社の教義
6 「人格の向上なくして、生産力の向上なし!」
第12章 戦意高揚としての娯楽映画
—— 太平洋戦争中期
1 敵愾心 —— 歴史映画の新たな役割
2 「解放」映画と「反解放」映画
3 間諜(スパイ)映画
4 ジャングル戦映画
第13章 鉄棺の蓋が閉じる
1 『戦陣に咲く』—— 情報局の失墜
2 映画批評の黄昏
3 「決戦非常措置要項」発令の余波
4 文化映画の運命
5 漫画映画の運命
第14章 「一億特攻隊」と米軍上陸
1 神風起こる
2 火の嵐吹く
3 神経戦
4 焦 土
5 玉 音
6 占領軍上陸
エピローグ
注
参考資料 —— 映画法
あとがき
引用・参照文献
人名・映画作品名索引