内 容
本書は、仏教思想や美意識の変遷とともに唐風から和様へと展開していく平安時代の彫刻を、多様な立場と個性をもった仏師・流派や成立背景にも踏み込みながら、個々の仏像に即して丹念かつ具体的に考察、近年発見の新資料も数多く取り入れ、その多面的な広がりを明らかにする。
目 次
序 平安時代の彫刻史 —— 唐風の消長
前 期
山と仏像
1 鞍馬寺毘沙門天像試論
2 妙法院護摩堂不動明王立像について —— 天台系不動像の一系譜
3 安祥寺五智如来像
4 初期天台宗の肖像彫刻 —— 円珍像を中心に
神仏習合と神像の発生
5 広隆寺本尊薬師像考 —— 神仏の習合と尊像の複合
6 初期神像の二つの相
中 期
聖宝・会理活躍期の造像
7 仁和寺阿弥陀三尊像の諸問題と同寺二天像
8 東寺食堂四天王像について —— 図像と技法から見た聖宝、会理時代
天暦前後の時代
9 六波羅蜜寺十一面観音像
康尚から定朝へ
10 同聚院不動明王像と園城寺新羅明神像 —— 定朝様成立に至る図像と技法
定朝とその時代
11 鳳凰堂阿弥陀如来像と定朝
12 眞木大堂不動明王二童子像・大威徳明王像
後 期
定朝以降の諸相
13 祇園社旧本地観慶寺薬師如来立像について —— 覚助・長勢時代の研究
14 仁和寺旧北院本尊薬師如来檀像について
15 近衛天皇陵多宝塔の仏像 阿弥陀如来像・大日如来像について
16 醍醐寺炎魔天坐像と瞳嵌入
後白河院政期の様相と鎌倉新様式
17 妙法院普賢菩薩騎象像について
18 明円作五大明王像再考 —— 後白河院政期における京都仏師の立場
19 久美浜本願寺阿弥陀如来立像について —— 三尺阿弥陀像への視点
20 高野山不動堂の八大童子像と運慶
阿弥陀如来の造像と生身仏の信仰
21 阿弥陀如来坐像 大阪・法道寺蔵
22 禅林寺阿弥陀如来立像 (見返り阿弥陀) 考 —— 続・三尺阿弥陀像への視点
奈良地方の造仏と図像の問題
23 平安時代東大寺の造仏機構と工人・仏師
24 薬師寺の大光背
25 興福寺曼荼羅と現存仏像
26 不空羂索観音像の鹿皮衣
27 薬師如来像の薬器
あとがき
索 引