内 容
鯨は人間にとって重要な生活財であると同時に、その巨体はいつの時代にも人の心を魅了し、意味の産出を促す「文化的」存在でもあった。本書は、捕鯨活動400年の歴史を通じて、東西の捕鯨文化を浮彫りにするとともに、自然と人間の関係を鋭く問い直した力作である。
(本体価格が3,800円から3,600円に変更となります。)
目 次
はじめに —— 風を捕え、影を捉ふる
第1章 鯨の「発見」
—— 近代捕鯨の誕生
1 鯨革命の時代
2 ホエール・ウォッチングとアメリカ
3 近代捕鯨の誕生
4 スピッツベルゲン島捕鯨 —— 法律論争と情報戦争
5 北極圏捕鯨の実際
第2章 ヤンキー・ホエーラーズ
1 ヤンキー・ホエーラーズの誕生
2 拡張の論理(1)—— 大西洋
3 拡張の論理(2)—— ケープホーンと捕鯨
4 拡張の論理(3)—— オーストラリア
5 拡張の論理(4)—— 太平洋
6 拡張の論理(5)—— 黄金時代への数量的アプローチ
7 典型的捕鯨船ジェームズ・ローパー号の場合
8 レイ・システム —— 捕鯨船の日常生活
9 鯨をどう見たか
第3章 鯨組と鯨
1 古代日本列島の鯨利用と基本捕鯨
2 鯨意識の高まりと鯨革命
3 鯨組の成立
4 鯨組の組織
5 有機的共同体としての鯨組
6 儀式としての捕鯨
7 母子鯨
第4章 鯨を書く、鯨を考える
1 旅行記と鯨
2 北極圏捕鯨の文書
3 捕鯨専門書の登場 —— ロマンティシズムとヒロイズム
4 科学と共和主義
5 鯨文書の黄金時代
6 白鳥の歌
7 本草学と鯨
8 鯨専門書の登場
9 鯨専門書の発展
10 一角の道
11 「文化」としての捕鯨 ——『勇魚取繪詞』の世界
第5章 鯨よ、あれがウラガの灯だ!
—— 漂流民と捕鯨船
1 捕鯨船の影
2 長者丸漂流物語
3 「セップ・ゼンロッパ」—— 救出に当たった船
4 「二十四日朝かと覺申候」—— 救出の日
5 「ヲイメンタンヌイベルフル」—— 出会った捕鯨船
6 「ダーフと申すもの有之候」—— 捕鯨船の食事
7 「この水目にしみ申候」—— 捕鯨船の日常生活
8 漂流民の見た捕鯨作業
第6章 エビス神の死
—— 近代化と鯨
1 鯨組とノルウェー式捕鯨 —— 終焉と始まり
2 捕鯨近代化への道
3 漁業資本と鯨組
4 エビス神の死と朝鮮侵略
5 南氷洋 —— 最後のフロンティア
6 軍靴の音と鯨 —— 戦略物資としての鯨油
7 BWU(シロナガス単位)の登場
8 捕鯨オリンピック
第7章 鯨の意味論
1 鯨の意味論 —— 3つのレヴェル
2 鯨の産業意味論
3 科学と感傷
4 人間中心主義
5 鯨の観念論的意味論 —— メディアホエールの誕生
6 鯨の相対的意味論(1)—— カニバリズムと鯨肉食
7 鯨の相対的意味論(2)—— 汎人間主義の崩壊と連続
8 結論にかえて —— 捕鯨文化と日本論
図表グラフ一覧
引用・参照文献