内 容
法の専門家主義と素人主義の対抗。—— ヴォルテールの関与した冤罪事件、ベッカリーアの『犯罪と刑罰』の運命、陪審裁判や死刑廃止の議論など、啓蒙から革命期までの刑法改革の潮流を、制度・事件・思想・法曹等の多様な視角から描き、底流をなす法観念の転換を解明した新しい法制史。
目 次
はしがき
第1章 法制史的背景
1 アンシァン・レジームの司法制度
2 刑事裁判手続きの流れ
3 18世紀の犯罪と刑罰概観
第Ⅰ部 事 件
第2章 カラス事件
1 事件の概要と背景
2 訴訟の経過と一審判決
3 控訴審判決とジャンの処刑
4 再審無罪への道
5 エリー・ド・ボーモンの訴訟趣意書
第3章 シルヴァン事件
1 事件の特徴
2 事件の発生から一家の逃亡まで
3 モニトワールから似姿の処刑まで
4 完全無罪の判決まで
5 ラクロワの訴訟趣意書
第4章 ラ・バール事件
1 はじめに
2 事件の経過
3 判決とラ・バールの処刑
4 ランゲの訴訟趣意書
5 おわりに
第Ⅱ部 思 想
第5章 ベッカリーアのユスティティア
1 消えたエピグラフ
2 『犯罪と刑罰』の脱神話化?
3 誠実な「裏切り者」
4 ベッカリーアからの読み
第6章 ヴォルテールと刑法改革思潮の展開
1 ヴォルテールのふたつの書物
2 ヴォルテールの刑法改革思想
3 刑法改革思潮の展開
第7章 刑法学者ミュイヤール・ド・ヴーグラン
1 ふたりの法曹
2 啓蒙刑法改革思想への反発
3 時代観と学問観
4 刑法改革思潮のなかのミュイヤール・ド・ヴーグラン
第8章 フランス啓蒙期の「陪審制」論
1 問題の所在
2 モンテスキュー、ベッカリーアとヴォルテール
3 コンドルセとテュルゴ
4 マラー、ブリソとセルヴァン
5 罪刑法定と自由心証
第Ⅲ部 革 命
第9章 フランス革命と刑法空間の変容
1 法的空間の革命
2 革命初期の刑罰論
3 革命前後の犯罪類型
4 1791年刑法典の新しさ
第10章 フランス革命期の法学教育・司法制度・法曹
1 図式的な概観
2 アンシァン・レジームの大学法学部
3 大学の終焉
4 中央学校と法学教育
5 革命期の司法制度と法曹
6 専門家主義と素人主義の対抗
あとがき
注
法令索引
事項索引
人名・書名索引