内 容
権力は恩赦に宿る ——。古代・中世から絶対王政・フランス革命を経て共和制期にいたるまで、政体の如何を問わず実質的に存続した恩赦。「主権の証」とも見なされるその権利は、各時代の諸勢力とどのような関係を結んでいたのか。法制・思想・実態の三つの視点から恩赦の歴史をトータルに跡づけ、刑罰中心の権力観を刷新する意欲作。
目 次
序 章 なぜ恩赦のフランス法制史か
(1)恩赦は前近代的で君主制的なものか
(2)恩赦と大赦
(3)恩赦の研究史
(4)本書の課題と構成
第1章 権力の形成と恩赦
—— 古代ローマから中世へ
(1)ローマ帝権の確立と 「恩赦権」 の誕生
(2)中世における権力の競合と恩赦
(3)正義と慈悲
第2章 すべての慈悲は王より来る
1 後期中世から近世にかけての王権の伸長と恩赦
(1)王令による恩赦権の独占
(2)恩赦権を与える国王
(3)恩赦による民衆の「臣民化」
(4)条件付きの赦し
(5)国王によらない恩赦
2 「神の赦し」から「王の恩赦」へ
(1)赦しの華々しさ
(2)国王即位時の監獄開放
(3)絶対王政の理論と恩赦 —— ボダン、ル・ブレ、ホッブズ
3 立法化された恩赦
(1)1670年刑事王令における恩赦制度
(2)恩赦獲得までの手続き
第3章 衰退する王権とゆさぶられる恩赦
1 社会の変化と恩赦
(1)嘆願の傾向の変化
(2)民衆による恩赦権の簒奪
(3)国王への「悪しき言説」と恩赦
2 王権に抵抗するパルルマン法院
(1)裁判権と恩赦権
(2)ラモワニョンの改革における恩赦
3 恩赦不要・廃止論とイデオロギー
(1)恩赦不要・廃止論の登場
(2)諸言説の交錯
第4章 共和制の成立と恩赦
1 恩赦の廃止
(1)1789年の三部会における恩赦
(2)1791年刑法典による恩赦の廃止
(3)恩赦の廃止と王権の停止
(4)「国王への恩赦」
(5)「人民の恩赦」から「議会の恩赦」へ
(6)フランス革命期の恩赦状
2 新たな秩序の誕生と大赦
(1)革命議会による大赦
(2)革命を終わらせるための大赦とその失敗
(3)立法府の大赦権
(4)ボナパルト体制の成立と赦し
3 恩赦の復活
(1)恩赦復活の企て
(2)恩赦の復活
(3)ナポレオンによる恩赦と恩赦状
(4)恩赦と君主制 —— コンスタンとメーストル
第5章 政体の変遷と恩赦
1 近代法における恩赦
(1)憲法に規定される恩赦権
(2)19世紀後半の恩赦制度
2 恩赦を取り巻く思想の変遷
(1)19世紀における恩赦と大赦
(2)刑事政策としての恩赦
(3)恩赦不要・廃止論の再登場
3 近代における赦し
(1)恩赦の統計化
(2)刑法改革と恩赦
(3)共和制と赦し
終 章
あとがき
資 料
注
参考文献
図表一覧
索 引
仏文目次・要旨
書 評
『週刊読書人』(2014年12月19日号、評者:髙木勇夫氏)