内 容
フランス革命を契機に現れ出た〈アンチモダン〉の系譜をたどり、数多くの近代人を魅了したその思想の核心に迫る。反革命、反啓蒙思想、悲観主義、原罪、崇高、罵詈雑言といった多面的な相貌の本質を明らかにするとともに、ド・メーストルからバルトにいたるもう一つの近代精神史に光をあてる。
著者紹介
アントワーヌ・コンパニョン
(Antoine COMPAGNON)
1950年生まれ。理工系のエコール・ポリテクニックを卒業後、ロラン・バルトのセミナーに参加し、ジュリア・クリステヴァの指導の下で引用をめぐる博士論文を執筆。パリ第四大学(ソルボンヌ)教授を経て、現在はコレージュ・ド・フランスおよびコロンビア大学教授。本書『アンチモダン』によって2006年にフランス学士院賞を受賞。
【これまでに刊行された著書(本書は除く)】
La Seonde main ou le travail de la citation, Seuil, 1979.
(『第二の手、または引用の作業』 今井勉訳、水声社、2010年)
Nous, Michel de Montaigne, Seuil, 1980.
La Troisième République des Lettres, Seuil, 1983.
Proust entre deux siècles, Seuil, 1989.
Les Cinq Paradoxes de la modernité, Seuil, 1990.
(『近代芸術の五つのパラドックス』 中地義和訳、水声社、1999年)
Chat en poche: Montaigne et l’allégorie, Seuil, 1993.
Connaissez-vous Brunetière?, Seuil, 1997.
Le Démon de la théorie, Seuil, 1998.
(『文学をめぐる理論と常識』 中地義和・吉川一義訳、岩波書店、2007年)
Baudelaire devant l’innombrable, PUPS, 2003.
La littérature, Pour quoi faire?, Collège de France/Fayard, 2007.
Le cas Bernard Faÿ: Du Collège de France à l’indignité nationale, Gallimard, coll. 《La Suite des temps》, 2009.
目 次
序 自由な近代人
第Ⅰ部 思 想
第1章 反 革 命
アンチモダンか、コントルモダンか
アンチモダンと反動派
反対の革命か、革命の反対か
「人間精神の恥」
知性の寡頭政治
第2章 反啓蒙思想
バーク、現実主義の使徒
経験的政治学とメタ政治学
「薄暗い標識灯」
第3章 悲観主義
個人に抗する社会
退廃への忍従
時代の人となること
あるアンチモダンの終焉
第4章 原 罪
罰と再生
継続される原罪
すべての人間が罪深い
伝染と苦痛の可換性
王の死
ド・メーストル的ショーペンハウエル
犠牲者は死刑執行人である
第5章 崇 高
純然たる不純さ
死刑執行人のメタ政治学
ロマン主義と反動
ダンディ
崇高に対する憎悪
第6章 罵詈雑言
ある文体の系譜学
撞着語法と倒置反復
アンチモダンな精神
言語に対する情熱
第Ⅱ部 人 物
第1章 シャトーブリアンとジョゼフ・ド・メーストル
—— ラコルデールの背後で
『キリスト教精髄』のシャトーブリアン
ロマン主義的主人公、ラコルデールとモンタランベール
シャトーブリアンとパリ・ノートルダムでの説法
ド・メーストルとシャトーブリアンの間で
影響をこうむった説教師
ラコルデールへの反発
第2章 ルナンからブロワまで
—— 反ユダヤ主義、あるいは反近代主義
ユダヤ人、近代主義の首謀者
親ユダヤ主義者の反ユダヤ主義
反ユダヤ主義者の親ユダヤ主義
第3章 ペギー
—— ジョルジュ・ソレルとジャック・マリタンの間で
ジョルジュ・ソレルによるアンチモダンの肖像
「現代世界」に反対するペギー
「抜け目ない者たちの世界」
パスカル、アンチモダンのヒーロー
道具化されたベルクソン
バンダ、「アンチ・ベルクソン」
マリタン、アンチモダン、ウルトラモダン、あるいはモダン
第4章 チボーデ
—— 最後の幸福な批評家
第三共和政を体現した男
比喩による批評
アンチ・ブリュンチエール
マラルメとフローベールとともに
創造的批評と……
……文学的風景の歴史との間で
独自のものと系列
多元主義者か二元論者か
政治的契機
第5章 ジュリアン・バンダ
——『新フランス評論』の左派反動
ペギーかバンダか
「文学主義」に対抗して
もう一つの知性党のために
自称知識人
絶対なるものの巡礼者
『新フランス評論』の反ファシスト派
タルムードの理知
流血漢
おぞましいユダヤ人
ポーラン対バンダ、すなわち競い合う二人のアンチモダン
モダン派、そしてヒューロン族の言語
バンダか『新フランス評論』精神か
第6章 ジュリアン・グラック
—— アンドレ・ブルトンとジュール・モヌロの間で
モヌロかブランショか、肯定か否定か
乗合馬車を追いかける
斬新なものと反動
第7章 ロラン・バルト
—— 聖ポリカルプスとして
最終講義
再 読
文学の死
前衛の後衛に
前衛のワクチン
前衛、そして言語への嫌悪
マルクス主義者バルトと反動家ポーラン
ディドロよりもボシュエを
詩による贖罪
結 魅力的な反動
〈運 命 愛〉
負けるが勝ち
監訳者解題 —— コンパニョン『アンチモダン』を読む
注
人名索引
書 評
『週刊読書人』(2012年12月21日号、評者:塚本昌則氏)
『週刊読書人』(2012年7月27日号、評者:桑瀬章二郎氏)
関連書
『歴史は現代文学である』 イヴァン・ジャブロンカ 著/真野倫平 訳