内 容
英語支配論をこえて、ポストコロニアルな現場から ——。中心国によるグローバル支配の道具といった単純化された見方をしりぞけ、マルチエスニックなマレーシアでうみだされた高等教育モデルとその波及を通して、アジアの英語化の生きた姿を、変動する社会と地域の中でつぶさに捉えた力作。
目 次
序 章 英語化するアジア
—— 英語化論・トランスナショナルな高等教育・ポスト複合社会
1 英語化という視座
2 応用言語学における議論
3 英語化するアジアに対する社会学的接近 —— 本書のアプローチと概要
4 研究調査方法について
第1章 エスニシズムとマルチエスニシティ
—— 多民族社会マレーシアにおける2つの方向性
1 はじめに
2 エスニーとしてのマレー人の創造 —— 西洋的概念の導入と現地化の過程
3 植民地主義とマルチエスニシティの制度化 ——「複合社会」の誕生
4 マレー・エスニシズムとナショナリズムの展開
5 マルチエスニシティと多文化 —— 経済発展とニュー・ミドルクラスの登場
6 2つの方向性の行方
7 結びに代えて —— ポスト複合社会への視座
第2章 マレーシアから生まれた高等教育モデル
—— トランスナショナルな制度の成立と仕組み
1 はじめに
2 新たな高等教育誕生の背景
3 トランスナショナルな高等教育の誕生 —— そのアクター
4 トランスナショナルな高等教育のマレーシア・モデル —— その仕組みの概要
5 トランスナショナルな高等教育の事例
6 結びに代えて
第3章 新たな高等教育モデルの創造
—— 民間の起業者と制度的イノベーション
1 はじめに
2 民間におけるトランスナショナルな高等教育の模索 —— 起業者の創造性
3 公的セクターにおけるマレー人学生のためのアメリカ派遣プログラム
4 トランスナショナルな高等教育のマレーシア・モデルの起源をめぐるエス
ニシティ間の交渉
5 結びに代えて
第4章 高等教育の民間化・英語化とエスニック関係
—— 国家と民間、ブミとノン・ブミ
1 はじめに
2 高等教育の英語化とエスニック・ディバイド
3 マレー人の中の変化
4 民間の高等教育に対する国家の反応 —— エスニック間の駆け引き
5 ポスト複合社会を考える視点
第5章 留学生の国際移動とマルチエスニックな文化仲介者
—— 中継地としての「英語国」マレーシア
1 はじめに
2 民間の高等教育機関の留学生 —— 中継地としてのマレーシア
3 留学生の移動経路と「半周辺」としてのマレーシア
4 英語による高等教育市場における文化仲介者
5 マルチエスニックなマレーシアの文化仲介者
6 トランスナショナルな「多文化主義」
第6章 トランスナショナルな高等教育モデルの国際伝播
—— アジア途上国から先進英語国まで
1 はじめに
2 中 国
3 ベトナム
4 インドネシア
5 先進英語国における応用
6 結 び
第7章 英語化とポスト複合社会の行方
1 はじめに
2 英語化とグローバル資本主義 ——「半周辺」としてのマレーシア
3 ポスト複合社会とマルチエスニシティの展開
4 ポストコロニアル社会における国家と市場
補 論 グローバル・メディアとローカルな言語状況
—— CNNインターナショナルの英語をめぐって
1 はじめに
2 CNNインターナショナルとその視聴者
3 マレーシアのテレビの中のCNNインターナショナル
4 CNNインターナショナルにおけるアメリカらしさの「脱響」
5 英語をめぐる対応関係の乖離 —— CNNIの浸透を促進する言語的展開
6 CNNインターナショナルと脱正統化される英語
—— アジア英語をめぐる議論の中で
7 結びに代えて
あとがき
文献一覧
図表一覧
索 引
書 評
『IDE 現代の高等教育』(第580号、2016年5月、評者:杉本均氏)
『社会学評論』(第66巻第3号、2015年12月、評者:関根政美氏)
『英語教育』(第63巻第11号、2015年1月、評者:本名信行氏)