内 容
資本主義経済の不安定性を解明したミンスキーなど、近年あらためて注目を集めるポスト・ケインズ派。その核心をなす貨幣・金融理論および成長・分配理論の着想源や展開過程を解き明かし、最新の動向を踏まえて学派の全体像に迫るとともに、新自由主義に代わる経済政策を展望する挑戦の書。
目 次
序 章 正統派経済学への挑戦
1 本書の目的
2 経済学史というアプローチ
3 ケインズ経済学の興隆と退潮、そして再生へ
4 本書の構成
第Ⅰ部 ポスト・ケインズ派経済学の歴史と現状
第1章 ポスト・ケインズ派経済学の史的展開
—— ケインズとカレツキの統合に向かって
はじめに
1 ポスト・ケインズ派経済学には一貫性があるのか
2 ケインズとカレツキの現代的加工
3 ケインズ = カレツキ総合の可能性
4 ポスト・ケインズ派経済学の将来
第2章 ポスト・ケインズ派経済学の方法と理論
はじめに
1 異端派経済学としてのポスト・ケインズ派経済学
2 ポスト・ケインズ派の経済理論
3 ポスト・ケインズ派経済学の進路
補論 日本におけるポスト・ケインズ派経済学
第3章 ケインズおよびポスト・ケインズ派の経済政策論
——「投資の社会化」論を中心に
はじめに
1 ケインズにおける「投資の社会化」論の展開
2 21世紀のケインジアン経済政策に向けて
おわりに
第Ⅱ部 ポスト・ケインズ派における貨幣・金融理論の展開
第4章 ポスト・ケインズ派貨幣経済論の回顧と展望
はじめに
1 「生産の貨幣理論」に向かって
2 貨幣経済における失業の原因
3 内生的貨幣供給理論の展開
4 内生的貨幣の一般理論
5 今日の課題 ——「ニュー・コンセンサス」への対抗
第5章 現代主流派マクロ経済学の批判的考察
——「貨幣的分析」の視点から
はじめに
1 ニュー・コンセンサス・マクロ経済学の基本的枠組み
2 ニュー・コンセンサスに対するポスト・ケインズ派の批判
3 「自然利子率」の概念をめぐって
おわりに
第6章 金融化と現代資本主義
—— 新自由主義の危機をどう見るか
はじめに
1 アメリカ資本主義の歴史的進化
2 金融化とマクロ経済
3 新自由主義の危機
4 グローバル・ケインジアン・ニューディールに向かって
おわりに
第Ⅲ部 ミンスキーの金融不安定性理論の可能性
第7章 ミンスキーの逆説
—— 金融不安定性仮説の射程
はじめに
1 ミンスキーの投資理論
2 安定性が不安定性を生み出す
3 経済政策の費用と便益
おわりに
第8章 金融的動学と制度的動学
—— ミンスキーの資本主義経済像
はじめに
1 資本主義経済の金融的動学
2 不安定な経済を安定化する
3 抑止的システムの二面的性格
おわりに
第9章 金融不安定性仮説の意義と限界
—— アメリカ・ラディカル派の視角から
はじめに
1 「ハリネズミ・モデル」の限界
2 新自由主義時代における経済危機の基本的性格
3 世界金融危機をどう解釈するか
4 経済危機の理論の統合に向けて
第Ⅳ部 カレツキと現代経済
第10章 カレツキの資本主義経済論
はじめに
1 カレツキによる「一般理論」の発見
2 価格と分配の独占度理論
3 利潤と国民所得の決定
4 投資と景気循環
5 完全雇用のための政策とその障害
6 カレツキ経済学の可能性
補論 カレツキの生涯
第11章 カレツキのマクロ経済学の核心
——「有効需要の理論」の意義と可能性
はじめに
1 カレツキの先行性に関する問題
2 パティンキンの異議ををめぐって
3 カレツキの「擬似均衡」モデル
4 経済成長の源泉はどこにあるのか
おわりに
第12章 カレツキの経済政策論
—— 完全雇用の政治経済学
はじめに
1 カレツキと社会主義
2 完全雇用の実現のために
3 ケインズ主義との交錯
4 資本主義のもとでの永続的な完全雇用は可能か
5 カレツキの教訓
終 章 ポスト・ケインズ派経済学の課題と展望
1 ケインズ主義から新自由主義へ
2 ケインズとカレツキを超えて
3 ポスト・ケインズ派経済学の到達点
4 現在の危機にどう立ち向かうか
参考文献
あとがき
初出一覧
人名索引
事項索引
書 評
『季刊 経済理論』(第55巻第2号、2018年7月、評者:薗田竜之介氏)
『現代思想』(2018年4月号、第46巻第6号、評者:塚本恭章氏)
『週刊読書人』(第3220号、2017年12月22日付、特集「2017年回顧総特集」、評者:塚本恭章氏)
『図書新聞』(第3312号、2017年7月22日付、評者:内藤敦之氏)
『週刊読書人』(第3195号、2017年6月23日付、評者:塚本恭章氏)
関連書
『経済学のどこが問題なのか』 ロバート・スキデルスキー 著/鍋島直樹 訳
『新版 社会経済システムの制度分析』 植村博恭・磯谷明徳・海老塚 明 著
『ケインズ経済学の再生』 P. デビッドソン 著/永井 進 訳
『現代制度派経済学宣言』 G.M. ホジソン 著/八木紀一郎・橋本昭一・家本博一・中矢俊博 訳
『新版 経済思想史』 大田一廣・鈴木信雄・高 哲男・八木紀一郎 編