書籍の内容
どのような社会秩序がよりよい自由を実現しうるのか? —— 市場化が進展する中、現代の経済社会を多角的に捉え構想していくために、経済学・経済思想の歴史的=重層的な理解をめざしたリーダブルなテキスト。最新の研究成果をふんだんに盛り込み、ロック・ヒュームからスティグリッツにいたる思想の 「断層写真」 を大胆に構成。
執筆者一覧
(執筆順)
高 哲男 (序章、第3章、第11章、コラム1・2・5) 田村信一 (第8章、コラム4)
坂本達哉 (第1章) 御崎加代子 (第9章)
米田昇平 (第2章) 藤井賢治 (第10章)
中村廣治 (第4章) 井上義朗 (第12章)
渡会勝義 (第5章) 荒川章義 (第13章、コラム3)
深貝保則 (第6章) 江頭 進 (第14章)
植村邦彦 (第7章) 寺尾 建 (第15章)
書籍の目次
序 章 経済思想の累積的構造
第1章 市民社会から文明社会へ : ロックとヒューム
1 ロックにおける自由・所有・貨幣
2 市民政府の確立と政治的・経済的秩序の実現
3 ヒュームにおける所有・貨幣と市場経済
4 市民社会から文明社会へ
5 文明社会における政治的自由と経済的自由
第2章 再生産秩序と自由 : F. ケネー
1 自由の体制
2 再生産秩序と消費
3 ケネーと18世紀フランス経済学
コラム1 重商主義の思想とJ. ステュアート
第3章 自然的自由の経済思想 : A. スミス
1 スミスにおける自然
2 経済発展のメカニズム : 分業と自然価格
3 「見えない手」 と国際経済秩序
4 国家と国民教育
第4章 市場経済の構造と発展モデル : D. リカードウ
1 労働価値論とそのモデル
2 現実的資本モデルのもとでの価値規定論の 「修正」
3 地代の発生と労働価値論
4 自然価格と市場価格
5 自然価格体系下の分配論
6 外国貿易の経済効果
7 租税論
第5章 市場社会における貧困と過剰 : T.R. マルサス
1 人口論
2 平等社会構想の批判
3 救貧法批判
4 農業主義から農工併存主義へ
5 一般的供給過剰の理論
6 貧困問題の探究としてのマルサスの経済思想
コラム2 保護主義の思想 : F. リストを中心に
第6章 功利主義的統治と経済的自由主義 : ベンサムとJ.S. ミル
1 功利主義の統治論
2 ベンサムの人間観、統治論、経済論
3 J.S. ミルの進歩的ヴィジョンと経済論
第7章 自由時間とアソシアシオン : K. マルクス
1 「自由」 のドイツ的概念
2 「個人の全面的発展」 と 「自由な時間」
3 資本主義による 「文明の横領」
4 アソシアシオン的生産様式
5 世界システムとしての資本主義
第8章 社会政策の経済思想 : G. シュモラー
1 社会問題と社会政策
2 文化としての経済現象 : 歴史的・倫理的方法
3 配分的正義
4 重商主義の再評価
5 シュモラーとその後の歴史学派
第9章 絶対的自由競争と国家 : L. ワルラス
1 純粋経済学の課題
2 純粋経済学の世界
3 純粋経済学の非現実性
4 国家の役割
コラム3 新古典派経済学
第10章 市場と組織の経済学 : A. マーシャル
1 マーシャルの課題
2 マーシャルの経済学
3 有機的成長の理論
4 市場と組織の経済学
第11章 制度進化の経済思想 : T.B. ヴェブレン
1 制度の累積的発展と進化論的経済学
2 ビッグ・ビジネスと株式会社
3 技術進歩と慢性的不況
4 国家と国際秩序 : 民族自決とモノ作り本能
コラム4 経済学と経済社会学 : M. ヴェーバー
第12章 動態的市場経済の思想 : J.A. シュンペーター
1 動態的市場経済の原理 (1): 均衡から新結合へ
2 動態的市場経済の原理 (2): 新結合から景気循環へ
3 動態的市場経済の原理 (3): 信用機構の役割、そして再び企業者へ
4 動態的市場経済の 「末路」
5 動態的市場経済の本性
第13章 確率革命の経済学 : J.M. ケインズ
1 確率革命とは何か
2 マクロ経済学の誕生
3 現在と将来を繋ぐ架け橋 : 利子の理論
4 マクロ経済の理論
5 セーの法則、経済成長と技術革新、貨幣数量説
6 貨幣経済とマクロ経済の平行性
7 非自発的失業と総需要管理の誕生
第14章 経済的自由と自生的秩序 : F.A. ハイエク
1 貨幣経済理論と自由主義
2 自生的秩序と自由
3 社会化された個人
4 社会科学者ハイエクと自由主義者ハイエク
コラム5 慣習的な英知とリベラル : J.K. ガルブレイス
第15章 現代経済学の潮流 :
マーシャルからサムエルソン、そしてスティグリッツへ
1 「見えない手」 の起源と変遷 : 「政治経済学」 から 「経済学」 へ
2 「経済学」 から 「経済分析」 へ : 「経済理論」 の誕生
3 「見えない手」 の形式化 : 新古典派総合と競争均衡の存在証明
4 情報の経済学 : 「見えない手」 の再検討
5 「市場」 と 「国家」 : 21世紀の経済と経済学への展望