書籍の内容
若き織機技術者として出発、父・豊田佐吉の事業を継承するとともに、繁栄のなかに潜む危機を察知し、時代の制約の中で苦闘しながらも日本の自動車事業の創出に精魂を傾けた豊田喜一郎 —— 本書は、トヨタ自動車の創業者の実像を、超人的な英雄や神話的な天才としてではなく、綿密な資料調査にもとづき描き出した伝記の決定版である。
書籍の目次
プロローグ
第1章 父・佐吉と喜一郎
1 青年期の佐吉と喜一郎の誕生
喜一郎の出生地、湖西の吉津村 / 幼少期の佐吉と発明心の芽生え /
内国勧業博覧会での学習 / 木製人力織機の発明 /
喜一郎の出生と故郷
2 佐吉の動力織機発明と幼年期の喜一郎
糸繰返機の発明と豊田商店 / 木鉄混製動力織機の発明 /
相次ぐ改良と発明 / 幼少期の喜一郎とその周辺 /
喜一郎の小学校生活
3 佐吉の外遊と中学時代の喜一郎
豊田式織機株式会社の設立 / 佐吉の常務辞任 /
佐吉の外遊と自信の回復 / 豊田自働織布工場の建設 /
中学生時代の喜一郎 / 第二高等学校への進学
第2章 学生時代と人間形成
1 第二高等学校の時代
「学都」仙台と二高入学 / 明善寮から下宿生活へ /
児玉一造と利三郎 / 親友の抜山四郎ら級友たち /
二高の講義と用器画 / 人格主義・教養主義と修養 /
喜一郎と仙台
2 東京大学工学部の時代
工業化・都市化と自動車 / 本郷での下宿生活 /
機構学と熱力学 / 神戸製鋼所実習と砲兵工廠・自動車工場 /
卒論と進路決定 / 工学部卒業後の東京生活
3 名古屋の紡織業と豊田紡織
名古屋と繊維産業の繁栄 / 豊田紡織株式会社の設立 /
豊田利三郎と豊田紡織 / 豊田紡織の経営発展 /
豊田紡織廠(上海)の設立 / 喜一郎の豊田紡織入社と紡績業
第3章 初の欧米旅行
1 アメリカ、イギリスヘの旅
愛子からの手紙 / 出発の直前 / 欧米旅行の意味 /
船上での喜一郎 / アメリカでの旅行
2 イギリスでの工場実習
工場実習ノート / 一路、オールダムへ / 下宿での生活 /
工場の現場へ / プラット社の工場概要 / 高品質紡機の秘密
3 オールダムの下宿での勉学
自動織機の研究 / 冬のオールダムで / オールダムでの余暇 /
イギリスからの帰国
第4章 自動織機の研究と誕生
1 紡績業での研鑽
二十子との結婚 / 喜一郎の進路 /
紡績業の「秘伝」
2 G型自動織機の誕生
隠れた研究活動 / 佐吉による研究許可 / 関東大震災に遭遇 /
佐吉の自働杼換装置 /「自動織機」の誕生へ /
実地第一主義 —— 佐吉の薫陶
第5章 機械製造の世界へ
1 自動織機製造への関わり
家族とともに上海へ / 上海での見聞 / 急遽帰国 /
2 豊田自動織機製作所の設立
喜一郎、常務取締役就任 / 綿業の不振 / 刈谷工場の公開 /
「紡織技術研究会」
3 織機製造体制の整備
他メーカーとの競合 / 製造体制の整備
第6章 特許権譲渡交渉の外遊
1 競争企業の出現
競争相手の登場 / 精紡機の開発
2 特許権譲渡交渉
プラット社との交渉 / 将来への疑念 /
アメリカでの特許権譲渡交渉
3 「豊田・プラット協定」
「協定」の締結とその内容 / 自動織機の評価 /
「豊田・プラット協定」のその後 / プラット社の組立技術の低下 /
豊田自動織機側の事情 / 二度目の外遊とその目的
第7章 自動車工業への参入
1 新規事業の構想
多難な年の幕開け / 喜一郎の将来構想 / 新規事業への夢
2 「豊田」のモラール・ダウン
受注の不振と動揺 / 人員整理と争議 / 新事業への秘めたる決意 /
佐吉の死と葬儀 / 25万円の特別慰労金
3 自動車工業への準備と背景
技術的課題への挑戦 / 鋳鉄の成功と意義 / 利三郎の内諾 /
内諾の背景 / 自動車需要の増大 /「自動車部」の設置
4 自動車の製造に着手
車種の選定 / 経験者の招聘 / 試作工場の建設へ /
エンジンの製作と苦労 / 喜一郎たちの苦悩
第8章 自動車事業確立へ向けた努力
1 自動車製造事業法
許可会社に指定 / 政府の援助
2 「大衆車」進出の背後で
小型自動車への関与 / 墓所の改葬 / 家庭での喜一郎
3 挙母工場の稼働
トヨタ自動車工業の設立 / 経営組織の整備 / 挙母工場の建設 /
恩賜記念賞の受賞 / 挙母工場の完成・稼働
4 新たな困難の発生と対応
自動車の品質問題 / 会社内部の対策 / 部品在庫の問題 /
フォードとの提携交渉 / 自動車品質の一応の安定化
5 戦時・戦後の喜一郎
戦時中の喜一郎 / 復興へ向けた日々 / 社長を辞して /
『日本発明家五十傑選』原稿執筆
エピローグ
あとがき
普及版へのあとがき
豊田喜一郎年譜
著者の他の書籍の紹介
『アメリカン・システムから大量生産へ』 D.A.ハウンシェル 著/和田一夫・金井光太朗・藤原道夫 訳
『帝国からヨーロッパへ』 J.オーウェン 著/和田一夫 監訳
『企業家ネットワークの形成と展開』 鈴木恒夫・小早川洋一・和田一夫 著