内 容
イギリスの「ものづくり」は復活したか —— 繊維から製薬、鉄鋼から電機までの主要産業を徹底分析、なぜある産業は衰退したのに他は健全なのかを歴史的に解明するとともに、イギリス経済が帝国からヨーロッパ域内貿易の重視へと転換することで再生したとして、経済没落という通説に挑戦。日本経済の今後を考える上でも示唆に富む。
著者紹介
ジェフリー・オーウェン
(Geoffrey Owen)
1934年生まれ。現ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の上級講師。産業再編公社の役員を務め、ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション(BLMC)海外事業部の人事教育担当取締役などを歴任した元『ファイナンシャル・タイムズ』紙の編集長。1991年からLSE。イギリス公正取引庁の諮問委員(2001~03年)。
(所属等は初版第1刷発行時のものです。)
目 次
謝 辞
第1章 遅れた後、また追いつく
第Ⅰ部 歴史的背景
第2章 最初に工業化した帰結
1 イギリス産業の成長 —— 1750~1870年
2 アメリカ産業の勃興
3 ドイツ産業の勃興
4 イギリスの競争への対応
5 両大戦間期のイギリスとドイツ、アメリカ
第3章 第二次大戦後のイギリスとドイツ、フランス
1 ドイツの社会市場経済
2 フランスの現代化
3 イギリスにおける戦後コンセンサス
4 継続と変革
第Ⅱ部 産業と企業
第4章 繊維産業
—— 誤った方向への現代化
1 1750~1914年 —— ランカシャーの勝利
2 両大戦間期 —— 危機のランカシャー
3 1945~60年 —— 短期間の好況
4 1960年代 —— 合併熱
5 1970年代 —— グランド・デザインの崩壊
6 1980年代と90年代 —— 国際競争への適応
7 ヨーロッパでのチャンスを逃す
第5章 造船業
—— 歴史に幽閉されて
1 1914年以前におけるイギリス優位の源泉
2 両大戦間期
3 世界の海運業における戦後好況
4 国家主導の現代化
5 政府は身を引いた
6 造船業の衰退をくいとめることはできたのか?
第6章 鉄鋼業
—— サッチャー効果
1 1870~1914年 —— 企業者的失敗?
2 両大戦間期
3 1945~60年 —— 戦後好況
4 1960年代・70年代 —— 成長率の低下と危機
5 1980年代・90年代 —— イギリス鉄鋼業の復活
6 収斂の遅れ
第7章 製紙業のグローバリゼーション
1 第二次大戦以前のイギリス製紙業
2 戦後の保護
3 EFTAショック
4 1980年代・90年代 —— 変容
5 ドイツとの比較
第8章 機械産業
—— 世界の覇者からニッチ的存在へ
1 1914年以前の機械産業における競争
2 両大戦間期
3 1945~60年 —— ヨーロッパからの撤退
4 1960~80年 —— 国際的局面の探求
5 1980年代・90年代 —— ニッチの探求
6 再編後の機械産業
第9章 自動車産業
—— 回避できた災難
1 1939年以前のイギリス自動車産業
2 1945~60年 —— 連続性
3 1960~80年 —— 衰退
4 1980年代・90年代 —— 再生
5 犯人探し
第10章 エレクトロニクス産業
—— ヨーロッパ共通の失敗
1 起 源
2 第二次大戦後のアメリカのリーダーシップ
3 ヨーロッパ諸国の対応
4 コンピュータ
5 半 導 体
6 家庭電化製品
7 電気通信機器
8 イギリスのエレクトロニクス産業の成果
第11章 航空機産業
—— 政府とのパートナーシップ
1 1939年以前の航空機産業
2 第二次大戦の衝撃
3 1945~64年 —— 水準の維持を試みたイギリス
4 1964~79年 —— パートナーの選択、ヨーロッパかアメリカか?
5 1980年代、90年代のイギリス航空機産業
6 航空機産業はもっとよくなれたのか?
第12章 化学産業
—— ナショナル・チャンピオン企業の生誕、成長、解体
1 1870~1926年 —— ドイツがリードした時期
2 1926~45年 —— 新会社の形成
3 1945~75年 —— 黄金時代
4 化学産業の成熟
5 ICIとイギリスの環境
第13章 製薬業
—— 勝利の方程式
1 1939年以前の世界の製薬業
2 1939~60年 —— 治療革命
3 1960~80年 —— 統合
4 1980年代・90年代 —— 製薬業の再編成
5 この産業は特別なのか?
第Ⅲ部 制度と政策
第14章 金融システム
1 1939年以前の金融と産業
2 第二次大戦後 —— 資本不足だったのか?
3 買収が多すぎたのか?
4 銀行 対 株式市場
5 シティと産業
第15章 訓練、教育、文化
1 作業現場の技能
2 技術者と科学者
3 経営者の育成
第16章 労働組合と労使関係
1 イギリス労使関係の特徴
2 戦後労使関係の悪化
3 ドイツとフランスとの比較
4 どの程度の損害があったのか?
5 1980年代・90年代の労使関係
第17章 政府の役割
—— コンセンサスから競争へ
1 1945~60年 —— 絶好の機会を見逃したのか?
2 1960~79年 —— 産業政策の失敗
3 マーガレット・サッチャーの経済的帰結
4 政府は責められるべきか?
第18章 結 論
ペーパーバック版へのあとがき —— ニュー・エコノミー下のイギリス経済
日本語版へのあとがき
訳者あとがき
注
参考文献
図表一覧
索 引