内 容
大衆民主主義との対峙、ヨーロッパ統合構想、近代文明批判 —— 青年保守派の代表的論客の思想と行動を通して、今日なおアクチュアルな意味をもつ「保守革命」の政治思想・構想を描きだすとともに、ナチズムとの本質的差異を明らかにし、ワイマルの悲劇をもたらした政治過程に新たに切り込んだ力作。
目 次
序 論
1 本書の課題
2 研究の状況
3 ユングの経歴と活動
第Ⅰ部 ユングの思想と政治構想
第1章 穏健フェルキッシュ・ナショナリズム
1 新しいナショナリズムの高揚
2 「民族」理念からする近代批判
3 歴史の潜勢力としての民族
第2章 「民族体」の健康と社会問題の解決
1 ワイマル社会国家批判
2 「民族体」の健康 —— 国家固有の社会政策課題
3 「社会問題」解決の道
第3章 国家の再建
1 大衆民主主義批判
2 「新しい貴族」
3 国家論
第4章 ライヒ再建
—— 中欧・ヨーロッパ新秩序
1 ヴェルサイユ体制とライヒ思想の活性化
2 ユングのライヒ思想
3 ライヒの構造 ——「地域連合主義」および「民族連合主義」
4 対外政策的意義
第5章 新しい中世
—— ユングにおける「保守革命」
1 意味喪失の近代から新しい中世へ
2 宗教再建・再キリスト教化への模索
3 知と信の区別と新たな連関
第Ⅱ部 政治過程におけるユング
第1章 民族保守運動とブリューニング大統領内閣期のユング
1 民族保守運動の成立と展開
2 ブリューニング政府からの離反とハルツブルク戦線
3 大統領選挙後のユングの対ナチズム姿勢
4 ブリューニング政権の崩壊と民族保守運動の終焉
第2章 パーペン内閣と保守革命
1 パーペン内閣の成立とその基盤
2 プロイセンへの介入
3 憲法改正論議と九月国家非常事態計画
4 パーペンのミュンヘン演説と「新国家」
5 国事裁判所の判決とライヒ改革の挫折
6 第2回国家非常事態計画
第3章 大統領政府体制の挫折
1 第2回国家非常事態計画の失敗 —— パーペンからシュライヒャーへ
2 シュライヒャーの挫折とその評価
3 大統領政府体制の挫折とユングの立場
第4章 ヒトラーの権力掌握とユング
1 ヒトラー馴致路線
2 キリスト教革命の対置
3 マールブルク演説と粛清
4 評 価
あとがき
注
人名索引
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『ワイマル共和国』 D.ポイカート 著/小野清美・田村栄子・原田一美 訳
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