内 容
20世紀文化史上の暗黒時代における音楽と政治の曖昧な関係を、同時代の諸資料や新聞・雑誌などを博捜することによって明らかにした労作。現代にいたるまでのドイツ音楽の連続性を念頭におきつつも、従来の伝記的叙述から踏み出し、ナチ時代における音楽のあり方をトータルに把握する。
目 次
はじめに
序 文
第1章 ワイマル共和国における音楽の保守反動(1919-33年)
1 音楽の反動的潮流(1919-23年)
2 バイロイトの再開と『音楽雑誌』
3 ナチズムの台頭と音楽活動への影響
第2章 音楽と国家統制
1 音楽活動の強制的同質化 —— ゲッベルスとローゼンベルクの闘争
2 ゲッベルス・帝国音楽院・宣伝省(1934-39年)
3 ゲッベルスの権力の限界
4 戦時期の音楽と国家統制
第3章 反ユダヤ主義
1 ユダヤ人の排除 —— 1933年以降
2 ドイツ・ユダヤ人文化同盟とゲットーの音楽
3 反ユダヤ的音楽プロパガンダ
4 レパートリーの再編 —— 音楽のアーリア化
第4章 退廃音楽
—— モダニズムへの闘争
1 ナチスによるモダニズム演目の粛清(1933年)
2 全ドイツ音楽協会 —— 一つの事例
3 退廃音楽展
4 国際主義
5 無調様式
6 新即物主義 —— ヒンデミットと他のドイツ人作曲家
7 ジャズ
第5章 音楽に奉仕する技術
—— ラジオとレコード
1 ラジオ放送
2 レコード録音
第6章 市場への対応
—— 第三帝国における音楽出版業
1 音楽出版の政治化
2 ユダヤ系音楽出版社の抑圧
3 ショット社の優位
4 ナチス期における成功とその遺産
第7章 順応か挑戦か
—— 第三帝国下のオペラハウス
1 ワイマル共和政期のオペラ(1927-33年)
2 ナチスの政権掌握 —— プロイセン劇場審査委員会より帝国演劇院へ
3 帝国演劇院
—— 官僚機構の限界とドレスデン、フランクフルト、ベルリンの芸術政策
4 レパートリーの全体像(1933-45年)
5 第三帝国期のオペラ・レパートリーの概観
第8章 連続性と非連続性
—— オーケストラとそのレパートリー
1 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2 ドレスデン、ライプツィヒ、ハンブルク、ミュンヘンのオーケストラ
3 闘争同盟オーケストラとナチス帝国交響楽団
4 占領地域のオーケストラ
5 レパートリーの一般的特徴
第9章 音楽史の書き換え
—— 音楽の文献と定期刊行物
1 人種論争
2 1933年以降の音楽史
3 音楽家の伝記
4 音楽出版界(1933-39年)
5 戦時期の音楽報道
注
訳者あとがき
第三帝国音楽史略年表
参考文献
図表一覧
索 引
関連書
『ナチズムと歴史家たち』 P.シェットラー 編/木谷 勤・小野清美・芝 健介 訳