内 容
「教育」の氾濫は何を物語っているのか? 少年犯罪、校則、親子関係、個性、能力などの事例をもとに、〈教育的なるもの〉が生み出される過程を鮮やかに描き出すとともに、教育言説の固有の正当化形式が見えなくさせていた歴史的・社会的文脈を浮き彫りにし、現代教育論の再考を促す労作。
目 次
序 章 教育言説の歴史社会学
1 問題意識
2 本書の構成
第Ⅰ部 〈教育的なるもの〉の系譜
第1章 〈教育的〉の誕生
1 はじめに —— 問題意識
2 辞書・辞典から
3 「教育」の語の登場
4 「的」の誕生と普及
5 「教育的」の登場
6 雑誌記事中の「教育的」
第2章 戦前期の教育と〈教育的なるもの〉
1 はじめに
2 問題の所在
3 「教育的」の誕生と普及
4 〈教育的なるもの〉による言説の正当化
5 〈教育的なるもの〉をめぐる争い
6 教育の自己増殖
第Ⅱ部 選抜をめぐる言説史
第3章 職業指導における〈個性〉
1 はじめに
2 職業指導言説における「個性」
3 個性=性能
4 人員の選抜・配分と「個性」
5 おわりに
第4章 早期選抜制の昔と今
1 はじめに
2 過去の「例外措置」
3 第14期答申のユニークさ
4 ポイントは何か
5 おわりに
第5章 学歴主義の制度化と展開
1 はじめに
2 役人の世界 —— 学歴主義の出発点
3 一般企業の学歴主義化
4 大きな賃金格差
5 丁稚・徒弟制度の衰退
6 戦時期~戦後の変化
7 学歴格差の推移
8 学歴主義をどう考えるか
第Ⅲ部 社会化言説をめぐる諸問題
第6章 校則の論理と校則問題の現在
1 はじめに
2 生活のコントロールの登場
3 〈監視〉と〈観察〉
4 校則問題について
第7章 大正期の一体罰事件と〈教育問題〉
1 課題と方法
2 事件そして裁判へ
3 裁判の進行と議論の展開
4 体罰と教育界
第8章 しつけの社会史
1 はじめに
2 村の世界・学校の世界
3 「教育する家族」の登場
4 「教育する家族」の汎化
5 「教育する家族」の自立化と学校の従属化
第9章 家族 —— 学校の関係史
1 はじめに
2 村の人間形成と学校の登場 —— 相克と定着
3 村を変える学校(明治後期~戦後復興期)
4 学校の〈黄金時代〉(高度成長期)
5 力関係の逆転(1970年代半ば以降)
第10章 学校像の変容と〈教育問題〉
1 はじめに
2 1960年代までの〈教育問題〉
3 70年代~80年代前半に起きた転換
4 近年のさらなる変化
第11章 〈青少年の凶悪化〉 言説の再検討
1 「仮想現実」としての〈青少年の凶悪化〉
2 非行・犯罪統計の中の青少年
3 誤認の構造
4 「質が変わった」という議論
5 事態をどう考えるべきか
第12章 〈子供の現在〉をどう見るか
1 はじめに
2 子供をどういう視点で考察するか?
3 子供をめぐる政治
4 おわりに
付 論
いじめ
児童虐待
日の丸・君が代
結 語
あとがき
索 引