内 容
未曾有の長期安定の後、ITバブルとサブプライム・ローン危機により、非難の的となったグリーンスパン。その成功と失敗から何を学び取れるのか。下巻では、大恐慌の再解釈に踏み込みつつ、予言的な講演から現在までをたどる。現代経済学と中央銀行制を根底から問い直す渾身作の完結編。
目 次
凡 例
第Ⅱ部 ワシントンでの二十一年(承前)
第6章 「根拠なき熱狂」講演の根拠
1 「根拠なき熱狂」講演
講演の構成と主旨
戦後金融政策史と「根拠なき熱狂」
2 ゴンザレスの詰問と「消えた博論」騒ぎ
「中央銀行の独立性」の無意味
批判する側の無知
3 ブライアンの「金の十字架」演説と連邦準備
「金の十字架」演説とインフレ主義
ブライアンと連邦準備創設
あれから百年
4 「根拠なき熱狂」講演の根拠
大平準の幕引き
民主主義と中央銀行の二律背反
補論2 政策適用による経済学の科学性の検証
1 経済学関係論と経済機械観
経済学の五つの手法
経済を機械と見たい経済学者たち
グリーンスパンの立ち位置の理由
2 ブレンターノの復古的刷新とその衝撃
科学基礎論としての精神作用学
価値評定における情意と理性
3 社会科学の科学性とモダニティ
科学の説明力と操作力
実在的自然法の支配と経済学
第Ⅲ部 第二次大恐慌と中央銀行制の限界
第7章 第二次大恐慌
1 第二次大恐慌とその原因
大恐慌の再来
国際要因の非重要性
2 危機直後のグリーンスパン
論文「危機」
危機の原因と擬似金本位制の出口戦略
シュレーディンガーの猫の死亡
3 オーストリア学派からの批判
ハイエク程度の人物
承知のうえで不誠実なことをした
4 主流派からの批判および応答
テイラーとの応酬
マンキューのコメント
「怪」発言の真意
第8章 企業の固定資本投資と擬似金本位制
1 企業家と経済学体系
完全競争と無妨害競争
二つの競争理論と二つの経済学
2 積極主義と対リスク萎縮
善意で市場を混乱させ続ける政府
CFR インタビュー
3 大膨張と大平準の示唆
企業家と帰属理論
政策形成におけるイデオロギーの役割
4 景気循環と経済運営の常識
グリーンスパンの政策原理
景気循環は経済の正常な姿である
第9章 中央銀行のパラドクス
1 貨幣の起源と微少準備銀行のしくみ
貨幣起源の理論と銀行業
微少準備銀行制
2 一般人を貨幣から隔離する中央銀行
微少準備銀行制からの中央銀行の生成
一般人の貨幣からの隔離
3 金融規制と非伝統的金融政策
金融規制の有害性
量的緩和の有害性
4 金の市場性と至上性
中央銀行家の苦境と金の存在感
擬似金本位制と金本位制
補論3 現代を近代より退行させた大恐慌
1 19世紀の金融論争とその意味
ボイドとキングの大陸経済学的分析
ウィートリとリカードの英米経済学的分析
2 19世紀の経済安定とその秘密
貨幣制度と物価の長期推移
金本位制とデフレ成長
3 物価安定という貨幣インフレ
貨幣増の効果の理論と物価
物価安定型貨幣インフレと大恐慌
大恐慌期の主なデータ
4 大恐慌と歴史の退行
金の十字架、連邦準備創設、物価安定論、大恐慌
人間・国家・社会科学技術
注
あとがき
参考文献
初出一覧
図表一覧
索 引
(上巻主要目次)
はじめに
第Ⅰ部 グリーンスパンのアイン・ランド・コネクション
第1章 我あり、ゆえに我思う
第2章 中央銀行を嫌う中央銀行家の肖像
第3章 グリーンスパンの資本理論
補論1 2つの経済学
第Ⅱ部 ワシントンでの二十一年
第4章 CEAと臨床経済学
第5章 大平準
『グリーンスパンの隠し絵』
書 評
『経済学論集』(第82巻第4号、2019年10月、評者:西川純子氏)
『歴史と経済』(第240号、2018年7月、評者:秋元英一氏)
『社会と倫理』(第33号、2018年11月、評者:山口臨太郎氏)
『図書新聞』(第3327号、2017年11月18日付、評者:髙橋亘氏)