内 容
「アメリカの道具」「休眠期」といった否定的通説を斥け、ブレトンウッズ期IMFにおける自律的な制度・機構・政策体系の成立と、戦後国際金融秩序に及んだ広範な影響を解明、主要資本主義国の対応もふまえた包括的な記述により、毀誉褒貶を超えた一貫したIMF像を初めて示した画期的成果。
執筆者一覧
(執筆順)
浅井良夫 (序章・第3章)
伊藤正直 (第1章・終章)
須藤 功 (第2章)
西川 輝 (第4章)
靎見誠良 (第5章)
野下保利 (第6章)
矢後和彦 (第7章)
石坂綾子 (第8章)
伊藤カンナ (第9章)
菅原 歩 (第10章)
岸田 真 (第11章)
目 次
略語一覧
序 章 IMFと戦後国際金融秩序
1 ブレトンウッズ体制とブレトンウッズ秩序 —— 本書の視角
2 固定相場制時代のIMFのシステムとその運営
3 国際機関・国民経済・市場 —— 本書の概要
第Ⅰ部 IMFの成立と発展
第1章 IMFの成立
—— ブレトンウッズ会議までの議論と英米交渉
はじめに —— 問題の所在
1 基本的対抗軸はどこにあったのか
2 ケインズ案・ホワイト案の形成過程
おわりに
第2章 IMFの初期政策形成
—— NACの現場
はじめに —— ブレトンウッズ機関とNAC
1 IMF開業期のガバナンスと英米金融協定の破綻
2 欧州復興計画の進展とIMF
3 冷戦のグローバル化と柔軟路線への転換
おわりに
第3章 制度化の進展と国際環境
—— 1950年代のIMF
はじめに
1 1950年代前半における制度化の進展
2 ヤコブソンの就任と制度化の達成
3 1960年代初めのIMF最盛期における矛盾
おわりに
第4章 IMFの自由化政策路線
—— 対英政策の分析
はじめに
1 政策路線の形成
2 1950年代前半の対英政策
3 1950年代後半の対英政策
4 為替自由化の進展と国際通貨システムの変容
おわりに
第5章 西欧通貨の交換性回復と国際流動性調達
—— IMFとキー・カレンシー
はじめに
1 「共同アプローチ」—— ポンドの交換性回復
2 ランドール対外経済政策委員会答申
3 IMFによる交換性回復支援
4 FRBのBA市場振興策
5 スエズ危機と流動性
おわりに
第6章 1960年代の国際流動性問題
—— IMF理事会における議論
はじめに
1 国際通貨改革論争と国際流動性問題
2 IMF理事会議事録における国際流動性問題の展開
おわりに —— 議事録分析の成果と含意
第Ⅱ部 IMFと国民経済
第7章 IMFとフランス
—— ブレトンウッズ秩序の多元性
はじめに —— 問題の所在
1 ブレトンウッズ協定とフランス —— クオータとIMF平価の設定
2 フラン切下げ —— フランスの独自路線とIMF・NAC
3 IMFの対仏14条コンサルテーション —— 対立と妥協の争点
おわりに
第8章 IMFとドイツ
—— 通貨危機と為替相場政策
はじめに
1 IMF加盟当初のドイツ
2 IMFとマルク切上げ
3 IMFとマルク交換性回復
おわりに
第9章 IMFとイタリア
—— 貿易自由化と交換性回復への途
はじめに
1 イタリアのIMF加盟
2 1947年の通貨安定化
3 イタリアの変動相場制をめぐるIMFとの論争
4 公的準備の再建と貿易自由化への途
5 IMFコンサルテーションとイタリアの政策運営
おわりに
第10章 IMFとカナダ
—— 変動相場制から固定相場制へ
はじめに
1 カナダの為替レートと為替制度
2 1950年の変動相場制移行の要因
3 IMFの反応
4 成長率低下と失業率悪化
5 カナダの固定相場制復帰
おわりに
第11章 日本のIMF加盟と戦前期外債処理問題
—— ニューヨーク外債会議と日米・日英関係
はじめに
1 日本のIMF加盟と外資導入構想
2 戦前期外債の未払い問題と平和条約締結後の対応
3 ニューヨーク外債処理会議における議論 —— 通貨選択約款問題を中心に
おわりに
終 章 IMFの変容をどう理解するか
—— ブレトンウッズ体制崩壊の捉え方
1 検討の結果みえてきたもの
2 IMFの役割とは
3 ブレトンウッズ体制はなぜ崩壊したのか
付 録
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
英文目次
書 評
『金融経済研究』(第38号、2016年3月、評者:上川孝夫氏)
『週刊エコノミスト』(2014年10月21日号、評者:上川孝夫氏)