内 容
自動車工場や外食チェーン店から米国の保険会社まで、終身雇用崩壊が叫ばれる以前から非正規労働は幅広く存在してきた。合理性があるから存続する、ならばその根拠は何なのか。職場まで下りた貴重な調査資料をもとに、「低賃金・使い捨て」のイメージを超えた実像を描き、改善策を提案。
目 次
序 章 非正規労働を考えるために
—— 他国も専門職もみる
1 問題と方法
「標準コース —— 新卒入社そのまま勤続」のあやしさ
非正規、正規併存の合理性
人材選別機能
付: エリートたちの採用
雇用調整機能
米装置産業のプール labor pool
低技能分野のにない手
2 構成 —— 他国もみる
1950年代の造船業から
アメリカのホワイトカラー職場もみる
自動車と電機の職場
なぜ政府統計をみないか
第1章 社外工と臨時工
—— 1950年代初めの造船業
1 資料の性質
造船業をとりあげる理由
社外工、臨時工とは
3冊の調査報告
肝要な視点の欠如
2 臨時工から本工への昇格
25人の履歴
本工にしめる臨時工からの昇格者
臨時工はどれくらい本工に昇格したか
3 仕事の分業
取付工の職場
電気溶接工の職場
4 社外工の多い職場
塗装工
整備工
木工
5 鉄鋼職場の分業
鉄鋼も社外工が多い
中核の圧延機職場
社外工の多い職場
そうじて
第2章 アメリカの非正規、正規労働者
1 ホワイトカラー層の観察から
キャリア初期の選別 —— 専門職
事実上の「非正規」
投資銀行では
2 アメリカの一般企業のホワイトカラー
ホワイトカラー中堅層への人材選別
ある保険会社
「サポーター層」 supporter, clerk
その移動
「専門職層」
人事畑のばあい
経理部門のばあい
いくつかの事例
経営中堅層の3つのグループ
3 アメリカのブルーカラーのばあい
先任権 —— 勤続の逆順
スーパーのパート
第3章 製造業の生産職場
1 1960年代半ばの臨時工
貴重な資料
1960年代半ばの入社
わりと多い非正規出身者
古典的なリーダーの法則
極度の人手不足
臨時工の昇格率
過小評価
新卒正規採用者に劣らぬ昇進
技能差
賃金差
一般統計
2 非正規労働者がきわめて多い事例 —— 2000年前後
村松調査
非正規7割の事例
技能表 —— 正規も非正規も1枚に
別の職場の経験も —— 点数化
タイトヨタのばあいと似る
3 山本[2004]調査
その性質
時代認識のあやうさ
職長たちの選択
労使協議へのとりあげ
4 電機産業の職場
電機連合[2007]調査
高度な作業 —– サイクルタイム50分
1枚の仕事表にはりだす
アンケート調査から
ほとんど請負がこなす職場
リース工場方式
第4章 三次産業の非正規労働者
1 「就業構造基本調査」による概観
事例をとりあげる視角
みるべき産業
2 外食産業
東京都調査
ある「デナーレストラン」の事例
仕事と組織
正社員のキャリア
人数からみた登用の可能性
3 チェーンストアのパートタイマー
ふたつの比較
本田[2007]の研究
食品スーパーの鮮魚担当
日用品売場
職能給化するパートの賃金
賃金の上がり方でみる
正社員初任給との「均衡」
脇坂[1998]、中村[1989]の貢献
2種類の「不本意パート」
4 ふたつの途 —— 仮説
ふたつのモデル
ふたつの理由
チェーンストアと自動車の差異、また西欧との差異
第5章 設計技術者
1 1960年代のアメリカ
内部からのするどい観察 —— 松浦『米国さらりーまん事情』
航空機設計者
非正規のサラリー
2 日本の非正規製品設計技術者
佐藤プロジェクトの成果
仕事の分業、競合
機能
雇用調節機能のコスト
派遣単価と大企業サラリーの比較
メーカーでの正社員昇格の途はあるのか
大手派遣会社の態度、技術者個人の考え方
3つの途
完全外注の途
終 章 ひとつの提案
—— 人材選別機能の重視
1 中下位職のばあい
ふたつの部分
提案
入口の情報の大きな差
新卒採用方式とくらべると
2 仕事表の働き
技能の向上を表示する
仕事領域の拡大
「中」と「上」のレベル
欧米と対比すると
査定の恣意性を制限する
正社員にも
3 中堅上位層や技術者に仕事表は適さない
正社員の評価には主観性がのこる
より高度な人材には無理か
4 労働組合の役割
大枠を協議する
組織を広げる
新興国への波及
書 評
『週刊ダイヤモンド』(新年合併特大号、2016年12月31日・2017年1月7日号)
『経済セミナー』(692号、2016年10・11月号、評者:橘木俊詔氏)
『週刊エコノミスト』(2016年6月21日特大号、評者:樋口美雄氏)