内 容
未曾有の危機は中国に何をもたらしたのか? 看過されてきた大恐慌の中国への影響を初めて体系的に叙述、銀本位制の特質と市場・政府の役割を捉え直し、中華帝国から現代中国への大きな転換を浮き彫りにする。近代の中国経済をグローバル・ヒストリーのなかに位置づけた画期的成果。
目 次
序 章 近代中国の経済システムと世界経済
1 銀本位制と中国 —— 国際通貨システムの影響
2 共有された期待と金融恐慌
3 市場、国家、通貨システム
4 中国と世界経済の連関 —— 危機を越えて
5 本書の構成
第Ⅰ部 インフレと自由放任の時代
—— 1931年以前の経済動向
第1章 銀本位制
—— 国際通貨システムにおける中国
1 前近代の銀流通と中華帝国の通貨システム
2 20世紀初頭中国の通貨制度
3 通貨としての銀、商品としての銀
4 銀取引と銀行 —— 平価と為替レートとの関係
5 国際銀価変動とその影響
小 結
第2章 工業化へ
—— 揚子江下流デルタの繊維産業
1 綿紡績業 —— 国内市場向け産業
2 生糸製糸業 —— 輸出産業
小 結
第3章 企業借款
—— 製造業の資金調達問題
1 創業資金の調達 —— 企業家の第一関門
2 銀行貸付とその条件
3 借款と企業経営
小 結
第Ⅱ部 大恐慌の時代、1931-35年
—— 政治経済の変容
第4章 農村恐慌
1 揚子江下流域小農経済のダイナミズム
2 農産物価格の下落
3 農村金融の崩壊
4 都市の問題としての農村崩壊
小 結
第5章 製造業の経営破綻
1 生糸製糸業の危機
2 綿紡績業の危機
小 結
第6章 上海金融恐慌 1934-35年
1 都市繁栄の幻想 —— 1929年10月-31年8月
2 遅すぎた不良債権処理 —— 1931年9月-34年6月
3 上海金融恐慌 —— 1934年7月-35年11月
小 結
第Ⅲ部 統治とその限界
—— 南京国民政府経済政策の再検討
第7章 危機への対応
—— 1935年11月 幣制改革
1 幣制改革の外交的経緯
2 1935年11月4日 幣制改革
小 結
第8章 景気回復と財政規律
1 物価動向
2 為替レートの安定と対外貿易の展開
3 華僑送金と外国投資
4 財政規律をめぐる問題
小 結
第9章 経済復興の模索
—— 政策の目的・手段・成果
1 製糸業の復興
2 綿紡績業の復興
3 農村金融の再建
小 結
終 章 大恐慌は何をもたらしたのか
—— 現代中国への展望
1 銀本位制と中国の工業化
2 通貨制度の政治経済
3 中国の国家と世界経済
注
参考文献
付 表
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『社会経済史学』(第78巻第2号、2012年、評者:リンダ・グローブ氏)