内 容
世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代までの全体史として描く、第一人者による決定版。上巻では、近世=初期近代へと至る展開を各国史や大陸/島嶼の区別をこえた一貫した視点でとらえ、環境、宗教、ジェンダー、商業などから、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る。
著者・訳者紹介
《著 者》
アンソニー・リード
(Anthony Reid)
ニュージーランド・ウェリントン生まれ(1939年)。オーストラリア国立大学太平洋アジア研究所教授、国立シンガポール大学アジア研究所所長などを経て、現在オーストラリア国立大学アジア太平洋カレッジ名誉教授。近代アチェ史研究からキャリアを始め、The Age of Commerce in Southeast Asia, c. 1450-1680, 2 vols.(1989; 1993)で東南アジア史にアナール学派の歴史概念を導入し、第一人者としての評価を確立した。インドネシアを中心とする近世・近代東南アジア史研究を専門とし、ナショナリズム研究や環境史でも多数の著作がある。
(所属等は本邦訳刊行時のものです)
《監訳者》 太田 淳/長田紀之
《訳 者》 青山和佳/今村真央/蓮田隆志
目 次
日本語版への序
はじめに
第1章 熱帯湿潤地域の人びと
穏やかな気候、危険な環境
森と水と人びと
人口が少ないのに多様なのはなぜか?
農業と近代語族
稲作革命と人口の集中
国家と社会の農業基盤
食と衣
女と男
中国でもなく、インドでもなく
第2章 風下の地のブッダとシヴァ
インド的国家をめぐる論争
青銅、鉄、土器
仏教徒世界とサンスクリット化
「憲章の時代」のシヴァとナガラ 900-1300年
玄関口としてのヌグリ —— オーストロネシア系の諸港市
大越と中国との国境
国家に属さない大多数の人びと
13-14世紀の危機
第3章 貿易とネットワーク
陸路と海路
生産の特化
アジア海域市場の統合
オーストロネシア系とインド系の開拓者たち
東アジアの貿易システム 1280-1500年
イスラームのネットワーク
ヨーロッパ人の参入
第4章 都市の発展と世界市場向けの生産 1490-1640年
東南アジアの「商業の時代」
世界市場向けの作物
船と商人
イノベーションの中心としての都市
貿易、銃、新種の国家
アジアの商業組織
第5章 宗教革命と近世 1350-1630年
東南アジア型信仰
上座部仏教コスモポリスと大陸部の国家形成
イスラームのさまざまな始まり —— 商人と神秘主義者
最初の世界戦争と分極化の連鎖 1530-1610年
競合する普遍主義
多元性、宗教の境界、そして「高地の野蛮人」
第6章 アジアとヨーロッパの邂逅 1509-1688年
欧華都市
文化的媒介者としての女性
文化的混淆
イスラームの「発見の時代」
東南アジアの啓蒙主義 —— マカッサルとアユタヤー
近世的形態としての銃砲国家
第7章 17世紀の危機
大分岐論争
長距離貿易の衰退
グローバルな気候変動と局地的危機
危機の政治的帰結
第8章
18世紀の文化的凝集
シンクレティズムと現地化
宮廷・寺院・村落における表演
歴史・神話・アイデンティティ
凝集とその限界
第9章 中国語化した世界の拡大
大越の15世紀革命
ベト人の拡張 —— 南進
広南国南辺の多元的フロンティア
大国化する阮朝ベトナム
「華人の世紀」と商業の拡大 1740-1840年
南方の経済フロンティアの中国人たち
第10章 熱帯プランテーションへの道 1780-1900年
胡椒とコーヒー
必需農産物の商業化
新たな独占 —— アヘンとタバコ
ジャワにおける強制された植民地農業
プランテーションとアシエンダ
大陸部三大デルタの経済圏 —— 米の単一作物生産
植民地化前後の成長の比較
第11章 自律性の退潮と最後の抵抗 1820-1910年
シャム ——「文明」化による生き残り
コンバウン朝ビルマ —— 悲運の近代化
阮朝ベトナム —— 儒教原理主義の高揚
「保護」されるヌグリ
スマトラのムスリム —— イスラームという代案
バリの黙示録
東部インドネシアの島々 —— 動き回る「ビッグマン」たち
最後まで国家を逃れる人びと
訳 注
【下巻目次】
第12章 国家をつくる 1824-1940年
第13章
第14章 消費する近代 1850-2000年
第15章 進歩と近代 1900-1940年
第16章 20世紀半ばの危機 1930-1954年
第17章 軍と王とマルクスと —— 権威主義的転回 1950-1998年
第18章 商業への回帰 1965年以降
第19章 ネーションをつくる、マイノリティをつくる 1945年以降
第20章 世界のなかの東南アジア地域
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訂正情報
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『世界史のなかの東南アジア』
『世界史のなかの東南アジア』(下巻) アンソニー・リード 著/太田 淳・長田紀之 監訳
訳者解説(完全版)
受 賞
書評等
『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、評者:桃木至朗氏)
『史学雑誌』(第131編第11号、2022年11月、評者:大久保翔平氏)
『アジア経済』(第63巻第4号、2022年12月、評者:末廣昭氏)
『図書新聞』(2022年5月28日号、第3544号、評者:大橋厚子氏)
ブックトーク・オン・アジア(第28回(前編)・第29回(後編)、2022年1月26日配信)