内 容
現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
【ALL REVIEWS】『図書新聞』書評(2019年12月14日号、第3427号、評者:野々村淑子氏)
著者紹介
レオノーア・ダヴィドフ
(Leonore Davidoff, 1932-2014)
エセックス大学社会学名誉教授(故人)。著書に Worlds Between: Historical Perspectives on Gender and Class(1995), Thicker than Water: Siblings and Their Relations, 1780-1920(2012)など。1989年には Gender and History 誌を創刊するなど、長年にわたってイギリスの女性史、家族史、ジェンダー史研究をリードし、「ジェンダー史発展の母」と称えられた。
キャサリン・ホール
(Catherine Hall, 1946-)
ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジ歴史学名誉教授。著書に White, Male and Middle-Class: Explorations in Feminism and History(1992),Civilising Subjects: Metropole and Colony in the English Imagination, 1830-1867(2002)など。19世紀から20世紀にかけてのイギリスを帝国、ジェンダー、階級を基軸として捉えなおす研究で知られる。
目 次
謝 辞
凡 例
プロローグ
イングランドの中産階級とは何であったのか
概念と方法
場面設定
場 所
登場人物
第Ⅰ部 宗教とイデオロギー
第1章 「必要なただひとつのこと」
—— 宗教と中産階級
国教会と非国教会の活動
福音主義的な信仰復興運動と敬虔なキリスト教信仰
宗教的な共同体
第2章 「あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つだからである」
—— 男性、女性、宗教
男性性に関する教義
女性性に関する教義
聖 職
牧師夫人
ジョン・エンジェル・ジェイムズ
教会組織
男女の平信徒
第3章 「徳を養う場所」
—— 家庭重視イデオロギーと中産階級
キャロライン王妃事件
中産階級の読み手と書き手
ウィリアム・クーパーとハナ・モア
領域の分離について論じた地方の著述家たち
1830年代から40年代にかけての家庭重視イデオロギー
第Ⅱ部 経済構造と経済機会
第4章 「中庸なる資産」
—— 男性、女性、財産
企業組織
土地と資本
企業の資金調達
家族の扶養
経営体、家族、友人の相互依存
企業における婚姻の役割
企業経営のための訓練
企業からの引退
第5章 「男なら行動しなければ」
—— 男性と企業
中産階級男性と職業
「健全な商業教育」の探求
商取引
銀行と銀行業
製造業
農業経営
専門職
給与職
第6章 「隠れた投資」
—— 女性と企業
女性と財産
家族経営体への女性の貢献
女性の教育とその効果
教師としての女性
宿屋経営者としての女性
商売をする女性
女性が置かれていた経済的な周縁の場
女性、男性、職業アイデンティティ
どうやって女性たちは生き延びたのか
第Ⅲ部 日常生活 —— 作動するジェンダー
第7章 「わが家族は小世界」
—— 家族の構造と関係
家族形成における婚姻の役割
父親であること
母親であること
子どもたち
兄弟姉妹
親族の役割
第8章 「わが炉辺」
—— 中産階級の家庭の創造
家庭とは何だったのか
仕事からの家庭の分離
庭園の意味
家の間取り
家の切り盛り
使用人の問題
第9章 「そびえたつ松と絡みつくブドウの木」
—— 中産階級のなかでジェンダーを受け入れる
作法と上品さ
性的欲望にたいする態度の変化
移動の自由とジェンダー
ジェンダーと社交の催し
外見としてのジェンダー
第10章 「向上のとき」
—— 男性、女性、公共圏
自発的結社
慈善団体
余暇と娯楽
男性、女性、市民権
エピローグ
原著第二版に寄せて
原著第三版に寄せて
附録1
附録2
訳者あとがき
注
主要参考文献
図表一覧
事項索引
人名索引
書 評
『西洋史学』(第271号、2021年6月、評者:松塚俊三氏)
『社会経済史学』(第87巻第1号、2021年5月、評者:奥田伸子氏)
『ヴィクトリア朝文化研究』(第18号、2020年11月、評者:八谷舞氏)
『歴史学研究』(2020年6月号、第997号、評者:岩間俊彦氏)
『図書新聞』(2019年12月14日号、第3427号、評者:野々村淑子氏)
関連書
『世界史のなかの産業革命』 R.C.アレン 著/眞嶋史叙・中野 忠・安元 稔・湯沢 威 訳