内 容
〈庭〉の歴史的変遷は、感性の歴史と深くつながっている。かつて〈庭〉が伝え得た詩的・文明的・政治的メッセージは、近代市民社会の成立とともに大きく変貌していった。本書は、17、18世紀の英国文学に描かれた庭園の暗喩機能の変遷をたどり、近世ヨーロッパの感性を剔抉する。
目 次
エピグラフ
第1章 中世からルネサンスへ
中世の愛の庭
ジャニュアリー老人の庭
庭と鍵とルネサンス文学
エリザベス朝期の庭園
ハンプトン・コート庭園
寵臣は競って庭をつくる
シドニー卿の庭
魔女アクレイジアの悪の庭
アドーニスの善き官能の庭
性愛と聖愛の弁証法
第2章 17世紀の宮廷の庭
新王朝と宮廷
ベイコンの随筆の庭
ベイコンと造園の実践
イーヴリンの庭
ルーシーとダン
政治的暗喩としての庭
ベン・ジョンソンの仮面劇
他の王党派詩人の仮面劇
第3章 17世紀の田舎屋敷とその庭
〈宮廷〉対〈地方〉
ジョンソンとペンズハースト
ペンズハーストの敷地の自然
屋敷の大広間の役割
荘園的自己充足性
静止と定着のエートス
ロバート・ヘリック
トマス・ケアリ
第4章 マーヴェルのアプルトン屋敷
地形誌の政治学
アプルトン隠棲のいきさつ
〈田舎屋敷の詩〉としての「アプルトン屋敷」
アプルトンの地形誌
アプルトンの花の庭
第5章 庭と牧場の力学
花園から牧場へ
草刈人登場
水平派の暗喩
〈中間的景観〉としての牧場と庭
古代牧歌詩における牧場の位置
2つの牧場、2つの庭
清教徒も庭を作った
庭を責める草刈人
第6章 庭と森
「庭」はどのように善き牧歌を歌うか?
アプルトンの森
動かない森と、動く森
ハウエルとデナムにおける森と海
イーヴリンの庭と森と海
ポープの動く森
第7章 海のなかの庭
島の両義性
バーミューダ島発見
島と大陸
ウォラーのバーミューダ島
ウォラーのイングランド
マーヴェルのバーミューダ島
第8章 ミルトンのエデン
〈山の楽園〉か、〈島の楽園〉か
ミルトンの理想の庭園
エデンと英国庭園史
それでも庭は捨てられねばならぬ
マーヴェルとミルトン
第9章 新古典主義と庭園
不規則性への開眼
アディソンの庭園論
ポープの庭園論
ポープの造園の実践
バーリントン伯への書簡
庭の自然と詩の自然
第10章 庭園と
ロマン主義への一過程
ポープの洞穴
隠遁の政治性
洞穴の中の科学と自然
幻想性と想像力
第11章 その後の英国庭園とロマン主義
2つの18世紀庭園
ヴォルテールとルソー
自然のような庭から庭のような自然へ
エピローグ
あとがき
主要文献
主要事項索引
関連書
『シェイクスピアはどのようにしてシェイクスピアとなったか』 山田昭廣 著